A M O U R -アムール-

□もろい
4ページ/4ページ







近くの木に肩を寄せ、消耗した体力を少しでも回復させようとする。


…それ以上に、安定しない精神を正したかった。





『………薫。』


「…………。」





そしたらティエトルがすぐに出て来て、擬人化する。





「今の、何?」


「…別に。」


「別にじゃないよ。さっきのアンタだったらありえないでしょ。」


「…そうかも。」


「何考えてたの。」





…聞いてくれるのは嬉しい。


でも、ごめん。





「…叫びたくなった、だけ。」





…ティエトルは勘が良いんだよね。


そうじゃなくても、今の状態なら誰でも分かるだろうけど………


…話したくない。





「それだけなら、何でそんなにテンション落ちてんの。」





本当にやめて。


今話しても君は信じてくれない。


…多分、煽るだけ。





「疲れた、だけ。」


「…………あっそう。」


「……。」


「さっきの話し聞いて、アンタはもっと図太い奴かと思ったのに。…僕の思い違いかーぁ…」


「っ………!」


「じゃ。僕は行くよ。」


「っツ………!」


「…ハッ! 本当に止めないんだねぇ。 じゃあ、お言葉に甘えて………いや、『御態度に甘えて。』かな? っあっははは!此処まで馬鹿とは思わなかったよ。短すぎる付き合いだったね。」





………いかなで………


なんて…


いえない………っ…


こんな…


こんな駄目な奴、見捨てられえ当然だ…ッ!






「ッく…そ…………っ………!」






自分に対する怒りが溢れてセーブ出来ない。



それに対しても、また怒りが込み上げる。



何で、どうして自分はこんなに強くなれないのか。



何の成長もしないのか。



それが死にそうに辛い。



…歯を食い縛って、木を動かす勢いで押し退けて…



その反動で動かない自分の足を無理矢理動かして、森の奥へと走った。



俯いて、前が見えない状態で突き進んだ。



前がどうあっても、今止まってしまったら・・・



…自分の鼓動が止まる気がした。




───でも。














 ────── ガ ツ ッ 














硬くて、大きな岩に額を思いっ切りぶつけた。



…強制的に、止まってしまった。






「っ…つ………!」






額を押さえて、ぶつかった岩を見てみると…



其処に、血が付いていた。






「………。」






そっと…



抑えた手を見てみると……



…思った通り、血が付いていた。




こんな痛み。




こんな傷。




こんな血。









なん…な………っなん、で…っ……!







悔しくて、苦しすぎて。



思いっ切り“握り拳”で、“岩”を殴った。






「ッつ…!」






それは当然痛くて、拳から痺れとなって伝わって来た。



…でも、足りなかった。







「っ、そぉ………!」







喉が詰まるこの感じ。




…これは、本当に嫌いだ。




嫌いで、嫌いで。




解消する方法何か知らない。




知らなすぎて…




ぶつける場所が、ない。




だから、“殴った”。




痛くても、“岩”を。




殴った。








前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ