A M O U R -アムール-
□辿り着いた先
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お疲れ様でしたー!
日暮れの炭鉱に響く声。
一日の仕事を終え、家に帰って行く作業員。
「ふぅ…じゃあ、僕達も帰るぞ。ズガイド……ス…?」
炭鉱を最後に見回って、僕達も帰ろうとしたけれど…
今まで隣に居た筈のズガイドスが居なかった。
「ズガイドス?何処だー?」
「ガイっ!ズガっ!」
僕が呼ぶと、ずっと隅の方からズガイドスが何かを引っ張りながら姿を現した。
「何をしてるんだ?ズガイドス…」
「ズガっ!ズガイ!」
そして、やけに真剣な表情をして僕に「これを見ろ」と言わんばかりに指を指す。
「…一体何を見付けたんだ…?」
少しずつ近付いて、ズガイドスの視線の先に目をやると……
「───っ…え!?」
…其処には、ボロボロになって横たわる女の子だった。
「ガイっ、ガイ!」
更に上を向いて見ると、彼女の物であろうウエストバックが岩に引っ掛かっていた。
「…あそこから…落ちたのか…?」
彼女が落ちたであろう場所は、結構な高さで…
生きているのかも疑問に思ったけど…
「とにかく、怪我を診て貰った方が良さそうだね…!」
「ズガ!」
「ズガイドス。頭突きであの鞄、取れるかい?」
「ズガイっ!」
僕はその子をゆっくりと抱き上げて、ズガイドスは見事に岩を砕いて引っ掛かっていた鞄を落とした。
「よし。急ぐぞ、ズガイドス!」
「ズガ!!」
それから、抱き上げてから気付いたけど…
その子は、とても大事そうにポケモンのたまごを抱いていた。
たまごには、少しだけ彼女の血痕が付いていたけど…
たまごには、傷一つなかった。
「…きっと…あの子が、ずっと守っていたんですね…」
「……。」
「…ズガァ…」
「…それで、あの子の容態は…」
「それが…酷い打ち身で…全身、痣と擦り傷だらけなの。背中は特に酷くて………骨に異状がないのが不思議なくらい…」
「…そうですか…」
…不思議だった。
何故彼女は其処までして、たまごを守っていたのか。
彼女には、あのたまごは一体何なのか。
…彼女はどうしてあんな所から落ちたのか。
「…聞きたい事が山積みだな…」
…今は、あの子が目を覚ますのを待つしかなかった。