薄桜鬼 短編
□金平糖
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ふんわり香る甘い匂いに誘われて、縁側に出てみる。
そこにはお茶とお団子を用意して座っている人の姿が・・・。
「やっと出て来たね。一緒におやつしない?」
邪気のない笑顔を向けられれば、私には断る術は無い。
『千鶴ちゃんじゃなくていいの?』
術は無いけど・・・。
沖田さんのお気に入りは・・・千鶴ちゃんのはず・・・どうして私なの?
「僕は、君とおやつ食べたいんだけどなぁ。」
首を傾げ、人差し指を口元に付ける幼い仕草がこの人には妙に似合う。
「ほら、早くしないと新八さんと平助君が来ちゃうから・・・ね。」
おいでおいでの手に招かれるように少しづつ側に寄る私を今度は苦笑しながら見ている。
「そんなに警戒しないの、いい子にしてたら僕だって斬らないから。」
お団子を挟んで座ると足をぶらぶらしながら沖田さんが話し始める。
「君さ、どうしてそんなに僕の事避けるのかなぁ?確かに斬るよとは言ったけど、本当に斬ったりしてないでしょ?」
真っ直ぐ私を見つめてくる視線が・・・優しい?
「大体、左之さん達には懐いてるのに僕には懐いてくれないなんてずるいよね。だから、今日から君の事餌付けする事に決めたから。」
優しい・・・のか?って!?餌付け?・・・・・え!?
「千鶴ちゃんはね、ちょっと優しくしてあげれば直ぐに警戒解いてくれたんだけどね・・・君は優しくさえ中々させてくれないしね。」
ねって・・・。ねって・・・。どう言う事!?
「はい、お団子どうぞ。」
お団子を一串差し出してくる。
『ありがとうございます。』
受け取ろうと串に手を伸ばすと、すっとお団子を下げられる。
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