捧げる宝珠

□sunny spot
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『おはよう、一君。ごめんね、寝過ぎちゃったね。』

パジャマのまま慌ててリビングに飛び込む私を見て、一君はフライパンと菜箸を持ったままやんわりと表情を弛める。

表情をあまり出さない一君は一見冷たそうだけど・・・よく見てると緩やかに少しだけ見せてくれる表情が温かい。

久しぶりに一君の部屋にお泊りした私は、週末の仕事がハードで気持ちよく熟睡してしまいしかも一君より遅く目が覚めてしまった・・・。

そして、一君が朝ごはんを作ってくれてる・・・。

嬉しいんだけど、申し訳ない!一君だって仕事忙しかったのに・・・。

テーブルには、和食の朝ごはんが並んでいる・・・お味噌汁にほうれん草の胡麻和え、鯵の開きが半分こで白いふっくらご飯、そしていま卵焼きをくるくる器用に巻いてくれている。

完璧・・・じゃない?

お料理の下手な私は、いつも一君の美味しいご飯を食べさせて貰っている。

だから、今日こそは私が朝ごはん頑張って作るんだって気合入れてたのに・・・。



「さあ、顔だけでも洗って来い。それから食べるぞ。」

美味しい一君の朝ごはん!何時までも凹んでいたら勿体無い・・・よね。

『は〜い!』

急いで顔を荒いパジャマから置かせてもらっている部屋着に替えると、一君の元へ戻る。



『「いただきます」』

沢山食べられない私に合わせて、控えめな量でお皿に盛り付けてある。

卵焼き・・・甘くしてくれてある!
 
『おいしぃ〜!!』

「そうか、よかった。」

目元を微かに緩ませて私を見つめる目が・・・優しい。

にこにこしながらのご飯を済ませると、洗い物はさせてもらう。

お皿を運んでくれる一君にお礼を言いながら、一枚一枚丁寧に洗う私を見てまた柔らかい表情を見せてくれる。

それだけで・・・幸せになれちゃう。





冬の低くて長い日差しが部屋の奥まで差し込んできて、ぬくぬく暖かい。

お洗濯もお掃除も済ませ、二人並んでソファーに座り一君は本を読んで・・・その一君を私はぽ〜っと眺めていた。



『あ、そうだ!』

私はお化粧ポーチからある物を取り出し、再び一君の元へ帰る。

そして、ソファーの前のテーブルにべビィーオイル・コットン・綿棒を並べると横に座っている一君の手を引き身体をこちらへと倒す。

「何をするのだ?」

不審な眼差しにも負けず、いわゆる膝枕の状態にすると顔を横に向け耳を上に向ける。

『耳のお掃除とマッサージだよ!気持ちいいからじっとしててね。』

綿棒にべビィーオイルを含ませ、耳の穴の入り口を拭き取るようにくるりと回す。

右も左も同じようにすると今度はソファーから下りて床に背を向けて座ってもらい、ソファーに座っている私の膝へあお向けるように頭を乗せてもらう。

手にオイルを伸ばし、耳たぶの中央から少し低い位置から上に向かって擦り上げる。
耳たぶの上のほうを、下に向かうように揉むそしてふちの部分を顔に向かってゆっくり揉み上げる。

これを何回か繰り返すうちに・・・。

日差しの暖かさにか、それともマッサージの気持ちよさになのか・・・一君の呼吸がゆっくりになって行く。

男の人には勿体無いぐらい長い睫が頬に影を落し、時々揺れる。

暫く続けると呼吸が寝息へと変わる・・・。

私の足に頭を預けた不自然な姿勢のまま眠り込んでしまった一君が、可愛くって愛おしくて・・・顔に当る日差しを手をかざして遮るとゆっくり眺めてしまった。


『一君、だーいすき。』

寝てる隙におでこにちゅうしようと、身をかがめると不意に後頭部に何かが触り・・・・ぐいっと下に押さえ込まれた。

そのまま、唇が一君の唇へ重なる・・・。

「俺も、お前が好きだ。」

逆さ併せのキスを繰り返し、お互いに好きを繰り返す。



窓から差し込む暖かい日差しより・・・・




もっと暖かいものを胸に感じた・・・・・




貴方と二人の





・・・・・・・・・・・・・・・・優しい時間









      暖かい陽だまりのひと時
















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