薄桜鬼 短編
□嫉視
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遠くから見ているだけで良いのだと・・・思っていました。
浅葱色の隊服に身を包み、先陣を切って歩く貴方の姿をただ見詰めるだけでいいのだと・・・。
前だけを見詰める瞳、京の町を見詰める鋭い視線。
晴れた日も雨の日も凍えるように寒い日も、私はただ貴方の姿を探す。
そして、貴方の背を見えなくなるまでずっと見送っていた。
声を掛けた事も、掛けられた事も・・・ましてや助けられた事すらない私。
視線すら重なった事も無いのに・・・・・。
こんなにも
心惹かれてしまっている・・・
どうして?
仲間と話す貴方の声、得物を手にした時の厳しく締まった表情・・・そして時折見られる笑顔・・・・・・。
そのどれもに心が囚われてしまった・・・・・。
それでも見ているだけで・・・・幸せだった。
叶う事が無い事がわかっていたから・・・・。
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