薄桜鬼 短編
□to eat up
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今日のデザートはピオーネ。
季節はずれだけど、おねだりをして買ってもらった。
夕食を済ませ冷蔵庫で軽く冷やして置いたそれをお皿に乗せ、リビングのローテーブルに載せる。
「あぁ、旨そうだな。」
しっかり房が締まり黒々とした大粒の実。
『よく見ると赤みがある色なんですね。』
掌に1つ載せ転がすように眺めていると、隣で器用に皮を剥いている歳三さんが1つ私の口の中に入れてくれた。
『甘いです!おいしい!!』
早速自分で皮を剥き始めたけど・・・。
途中で切れてしまって、歳三さんみたいに綺麗に剥く事ができない。
「お前、不器用だな・・・。」
ふっと息を漏らすみたいに笑うと、用意してあったタオルで手を拭き私の腕を引き寄せた。
素直に引かれるまま歳三さんの脚の間に座り振り返ると、チュッと軽いリップ音付きで口付けされた。
『な!』
紫水晶の様な瞳が細くなり笑みの形へと変わる。
「食わせてやるよ、ほら口を開けねぇか。」
次々に皮をめくり私の口へと運んでくれる。
簡単に剥いていく歳三さんに比べて何度挑戦しても綺麗に剥けなくて、1つ剥くだけで手が汁でベタベタになってしまう。
それでも何とか1つ剥き終えた。
それを口に運ぶ途中、ぐっと方向が変わった。
「それは、俺の分だろ?」
手首を掴まれ歳三さんの口へと運ばれる。
葡萄を摘んだ指ごと口へ含まれる・・・。
「確かに甘ぇな。」
そしてそのまま・・・私の指をそのあたたかな舌で絡めるように一本ずつ舐め上げる。
指を口腔に含まれると、指の腹が上顎に触れてしまいそこから・・・甘い痺れが走り抜ける。
含んだ指をゆっくり引き出す・・・
5本の指全てが舐め尽くされると・・・私の指は淫らに濡れていた。
葡萄の果汁・・・?それとも・・・・
自分の指が舐めれているのを見ているだけで呼吸が浅くなる。
歳三さんはまだ手を離してはくれず、拇指球を甘噛みすると、手の平から手首へと舌を滑らせる。
手首の脈を感じる辺りに痛みを感じ、見ると朱の花びらが1つ落されている。
『っ・・・あぁ・・・』
柔らかい熱が私の手の平を舐める事に満足したのか・・・。
不意に頤を反らされる。
・・・紫水晶の中に揺らめく欲火が立ち昇っている・・・
唇に落ちるその舌は上下の唇を舐め上げると・・・
「こっちの方が甘ぇと思うがな・・・」
再び重なる唇・・・
逸らせない視線・・・・
閉じられない瞳・・・・・
貴方の欲火に焼き尽くされそうで・・・・・
怖い・・・と思いながらも
囚われてしまう・・・・・
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