短編

□Best friend
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「誘ってみるもんだな。」

そう言ってニヤリと口角を上げたオレは、手元にあるグラスをゆっくりと持ち上げ、向かいの席に座る相手の方へと傾ける。
すると相手も自分のグラスを掴み上げ、こちらが差し出したグラスにカツンッ…と、軽く合わせた。

「今日付き合ったのはただの気まぐれだぁ。ヘラヘラすんな。」

そのつれない返事が可笑しくて再び喉をククッ…と鳴らせば、短気な同級生の視線が一気に厳しいものへと変わる。
それに気付いたオレは慌てて表情を引き締め、グラスを自分の口元へと引き寄せた。
そして、一口分のアルコールを飲み下し、肩の力を抜くと、スクアーロの顔をじっと見つめた。

「なんだぁ?」

「いや…。昔と変わんねーなと思ってさ。」

「あ゙?」

「顔。」

「オレからすればテメェの方が変わってねぇように見えるがなぁ。」

「そうか?でも…オレ達も、もう32か…。そう思うと歳とったよな。ガキの頃が懐かしいぜ。」

そうぼやいて、オレは物思いにふけるように椅子の背もたれに体重をかけ、斜め上の天井を眺めた。
あの頃はマフィアなんて大嫌いで…ましてやファミリーのボスになんか、これっぽっちもなる気がなかったのに…。

「人生分からないもんだな。」

「…ゔお゙ぉい、話が繋がってねぇぞぉ!独り言なら他所でやれぇ。」

「おっ、ワリィ。」
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