短編
□無音2
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スクアーロに叩かれた所は痛くない。
だが、この私達のやり取りを見て、再び周囲はざわめき出した。
「やっぱり喧嘩だ」
「今年最後のパーティーだというのに、何故あんなに相性の悪い相手を選んだのか」
「仲が悪いのね」
飛び交う言葉は囁き程度の音量だったが確実に耳に留まり、私は胸が痛くなった。
恥ずかしいのか、悔しいのか、悲しいのか…あるいはその全てか。
ゆっくりと握った両手には、自然と強い力がこもった。
スクアーロは確かに短気で、女の頭も平気で叩く。
でも、ヴァリアーの中じゃルッスーリアの次に優しいし、叩く時は今みたいに必ず十分な手加減をしてくれる。
だから本当は、周りが思っている程スクアーロと私は仲が悪いわけではないのだ。
…多分。
「…っ!?」
いつの間にか俯いてしまっていた私の目の前で、サラリと長い銀髪が靡く。
そして、突然スクアーロに手首を掴まれたかと思えば、そのまま強引に引っ張られ、私は転びそうになりながら彼の後ろを歩き出した。
「スクアーロ…?」
「ったく…周りが適当に口走った事を、いちいち気にしてんじゃねぇ。」
「え…?」
「オレはテメェと仲が悪いなんて思った事はねぇぞぉ。」
「………そっか。」
スクアーロのくれた言葉が嬉しくて緩んだ自分の顔に、私は思い知らされた。
一歩先を歩くスクアーロの背中をじっと見つめながら、自覚した気持ち通りに唇をそっと動かしてみる。
『好き。』
もちろん、声には出さなかったけれど。
→続く
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