短編
□無音2
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それに、実を言うと先程周りから聞こえた言葉のせいで、なんとなく気が沈んでいた私は、彼に文句を言う気が失せてしまっていたのだ。
(ん…?そういえば、なんで私は落ち込んでるの?)
この状況で苛立つなら分かるが、落ち込むのはおかしい。
自分の感情を不思議に思った私は、しばらくの間、首を傾げて悩んだ。
そして…その悩みの答えが頭を掠めた瞬間、ビクッと肩を跳ね上がらせた。
(まさか…周りの人達に、自分とスクアーロの仲が悪そうに見られた事が嫌だった…?)
私は勢い良く首を左右に振り、たった今気付きかけた想いを消そうと試みた。
前触れもなく姿を現したこんな感情を認めたくなかったのかもしれない。
いや、認めたくないと言うよりは、戸惑っている…そんな表現の方がしっくりくる。
「…ゔお゙ぉい。オレをシカトするなんて、いい度胸してんじゃねぇか。」
頭上から降ってきた重低音に、私はハッとして顔を上げた。
すると、そこには腕を組み、引き攣った笑みを浮かべるスクアーロが私を見下ろしていた。
「ご…ごめん!ちょっと…考え事に夢中で。決してスクアーロをシカトしようと思ったわけじゃ…。」
「考え事だぁ?」
「う、ん。」
「目の前にいるオレの存在も忘れたぐらいだ…さぞかし立派な内容なんだろーなぁ?言ってみろぉ。」
「い、言えるわけな…!」
「あ゙?」
「っ…、その、全然たいした内容じゃないから、別に言わなくても…。」
「たいした内容じゃないだぁ…?」
スクアーロに自分が惚れたのかどうかで悩んでいたなんて口が裂けても言えない私は、必死で言葉を濁した。
しかし、そんな答えでスクアーロの機嫌が回復するわけはなく…結局、私は彼に頭を一発叩かれる羽目になった。