短編

□無音2
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「げっ…。」

この一文字が、車から降りた直後視界に飛び込んできた景色を見た時に感じた私の感想だった。
想像していたよりも遥かに立派なパーティー会場の外観に気圧された私は、吸い込んだ空気を勢い良く飲み下し、その場に立ち尽くす…。
そして、チラリチラリと周囲の様子を伺えば、会場に集まったボンゴレ上層部の皆様や、同盟ファミリーのボス達が纏う優雅な雰囲気に追い打ちをかけられた。
慣れた動作で彼らが連れている女性の手を取りエスコートする様は、まるで映画のワンシーンのようで、無意識に見惚れてしまう。

(もしかして、とんでもなく場違いなところに来てしまったんじゃ…。)

私は、一気に重苦しくなった胃の辺りを押さえ、軽く摩った。
しかし、いくら撫でつけたところで、その症状が軽減される事は無い。
むしろ、悪化の一途をたどるばかりだ。

(か、帰りたい…!会場内に入る前から胃に穴があきそう。)

すっかり弱気になった私は、力無く息を吐き出し、うなだれた。

その時…

「あれ…スクアーロ?」

ふと気が付けば、さっきまで隣りにいたはずのスクアーロの姿が見えない。
慌てて辺りを見回すと、すでにパーティー会場の入口近くまで一人で足を進めていた薄情なスクアーロの背中が見えた。

「…置いてきぼりですか…。」
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