短編
□無音
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頭上から降ってきたスクアーロの不機嫌そうな舌打ちに、私も自然と表情が曇る。
そして、苛立つスクアーロに少しでも対抗してやろうと、「今年最後の貴重な一日を私なんかと過ごさせて、すみませんね!」と皮肉を込めて口にした。
しかし、そんな私の言葉に返ってきたのは、「別に。」という素っ気ない返事と、冷えた自分の肩を包んだ大きい手。
「…あのー、スクアーロ…くん?」
「んだ、気持ちわりぃ呼び方しやがって。」
「て、て、手が!」
「声がでけぇ。」
まさかあのスクアーロに、声の大きさを注意されるとは思わなかった。
…じゃなくて。
いきなり肩に手を回されるなんて、予想外もいいとこだ。
私は、このスクアーロの奇行にどう反応したら良いのか分からないまま、ただ固まるしかなかった。
すると、私の全身の緊張を察知したのか、スクアーロは横目でこちらを見ると、可笑しそうに口角を吊り上げた。
「なに警戒してんだぁ。寒そうだったから、手を置いてやっただけだぜぇ?」
「……どうもありがとう。」
まるでからかうようなスクアーロの台詞に、私は安心して肩の力を抜くと、斜め上にあるスクアーロの顔を見上げた。