短編

□無音
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「そろそろ、時間か…。」

鏡の前で全身を一通りチェックしてから、私は迎えの車が来ている場所へと向かった。

アジトの外に出ると、ひんやりとした空気が肌を纏う。
私は鳥肌の立った両腕を強く組み、摩りながら、暖房が効いているであろう車の中へと急いで駆け込んだ。
すると、車内には予想外の先客が見慣れない正装で座っていた。

「よ゙ぉ…。」

「スクアーロ…!どうしたの?」

「どうしたもこうしたも…オレもテメェと同じ任務だぁ。」

そう言って、不機嫌そうにシワを眉間に寄せたスクアーロを見て、私は苦笑した。
どうやら、この年末に災難を被ったのは自分だけではないらしい。

私はスクアーロの隣りに腰を下ろすと、再び両腕を組み直した。
私が車に乗り込む際に、大きく開かれたドアから冷たい外気が流れ込んだせいで、車内の気温が下がったのだ。
スーツを着込んでいるスクアーロはまだしも、背中と胸元、そして両腕の素肌を広く晒している私に、この温度は辛い。
しかし、再び暖房が効いてくるまでは仕方ないと思い、私は肩を縮ませて寒さに耐えた。

「ゔお゙ぉい、羽織る物とか持って来なかったのかぁ?」

「どうせ会場では脱ぐから、邪魔になると思って…持って来なかった。」

「ちっ。」
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