短編

□沈みゆく餌
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(確か…アーロだったっけ、名前。)

相変わらず、アーロはスクアーロの回りをゆっくりと泳いでいる。
そして、時々スクアーロが腕を伸ばし、その背を撫でれば、嬉しいのかアーロの尾が勢い良く跳ね上がる。

「よく懐いてるね。」

「まあな。」

いつも大勢の敵を蹴散らしている凶暴な姿しか見た事がないから、怖かったけれど……こうして見ると、意外とアーロも可愛いのかもしれない。

私は、少しだけ身体の緊張を緩め、スクアーロと戯れるアーロを眺めた。
すると、そんな私の視線に気付いたのか、アーロがこちらの方へゆっくりと近付いて来た。

「っ…!」

急なアーロの接近に、私は再び身を縮こませ、息を止める。
そんな私を見て、スクアーロは「怯えなくても平気だぁ。そいつは、オレの意思を読み取って動く。オレが“敵”として見ていないテメェに襲い掛かる事はねぇ。」と、きっぱりと言い切った。

スクアーロがそう言うなら、たぶん大丈夫なのだろう。
私の事を、アーロが食う気満々で近付いてくるように見えるのは、きっと気のせい。
そう、アーロが私の目の前に来て、今思いっきり口を開けたのは、絶対……

気のせいじゃなく、食う気満々だ…!
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