短編
□沈みゆく餌
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「この子…大丈夫よね?」
暇潰しに訪れたスクアーロの部屋。
そこへ一歩足を踏み入れた私は、目の前の空間を優雅に泳ぐ彼の匣兵器を凝視しながら問いかけた。
背中をピッタリと後ろの壁に張り付け、この巨大な鮫から少しでも距離を取ろうと必死になっている自分は、酷く滑稽な姿だと思う。
また、こんな些細な抵抗など、この鮫に対しては無意味だという事も自覚している。
でも…。
どうしようもない。
仕方ない。
怖いものは怖い。
「大丈夫って…何がだぁ?」
「急に襲いかかってきたりしないわよね?」
「ああ、大丈夫だぜぇ?…オレがテメェに対して殺意を抱かねぇ限りはな。」
そう言って、鼻で笑うスクアーロを、私はジロリと睨みつけた。
だが、今、彼の機嫌を損ねる事への危険性に気付き、慌てて睨むのをやめる。
万が一、スクアーロを怒らせて、こんな鮫をけしかけてこられたら……私の命はここで散るのだ。
「スクアーロ。その鮫、しまわないの?」
「あ゙?しまう必要ねぇだろーがぁ。」
あります。
大いにありますって…!
むしろ、どうして自室で匣を開匣しているのか知りたい。
「だいたい何で、こんな所で開匣してるのよ。」
「こいつも、たまには外に出してやらねぇと、退屈だろうと思ってよぉ。」
「そう…。」
そのスクアーロの言葉を聞いて、私は再び視点を鮫に移した。