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□奇跡の男
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今朝、ボスは一人の使用人を消された。
その使用人は、ボスに飲み物を持ってこいと言われた際、あろうことかミネラルウォーターを準備したのだ。
馬鹿め…起床時にボスが口にするのは麦茶と決まっているのだ。
ボスの好みを知らんとは、万死に値する…。


この男、スクアーロもそうだ。
消された使用人の代わりに、ボスに飲み物を持ってこいと命じられ、ウイスキーを片手にボスの自室に向かって行った。

しばらくして、ボスからオレの携帯に「カス鮫は使えねぇ。テメェが持って来い。」と、連絡があり、オレは早速麦茶を準備して、ボスの自室へと向かった。

すると、ちょうどボスの自室からこちらへ帰ってくる、“使えない男”と対面した。


「チッ…。」

そう、すれ違い様に短く舌打ちを寄越した男の情けない格好を見て、オレはニヤリと口端を吊り上げた。

足早に去って行くその男の肩には、細かく砕けたガラスの破片。
ご自慢の長い銀髪は、重い水分を含み、べったりと隊服に張り付いている。
そして…酒臭い。

これらの情報を用いて導き出される答えは一つ。

この男…スクアーロは、ボスにウイスキーの入ったグラスを投げ付けられたのだ。

全く…愚かすぎて笑える。
寝起き1番にウイスキーを喉に通したいと思う奴がいるわけないだろう。

「ククク…。」

たまらず口から洩れる笑いを止める為、オレは目を静かに閉じ、ゆっくりと深呼吸をした。
そして、ボスの部屋の重い扉をノックし、中から「入れ。」と、ボスのお声がかかった。
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