過去拍手
□Secret smile
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「ねぇ、ディーノ。」
「なんだ?」
「私と仕事どっちが大事?」
そう嫌味とも取れる質問をぶつけた私に、ディーノは顔だけ向けて「んー…。」と困ったように唸り声をあげた。
そして答えを出さないまま、再び手元の書類に視線を落とし、手を動かし始めた。
私がこんな質問を何故したのか…その理由に彼は気付いただろうか。
別に「仕事よりおまえが大事」なんて甘い言葉が欲しくて言ったんじゃない。
…今日は私の誕生日なのに、おめでとうの一言も貰えないまま、黙々と仕事をしている貴方を見ている事に耐えられなくなっただけ。
嫌味のひとつぐらい言ったって、きっとバチは当たらないわ。
窓の外に目をやれば、夕闇に街がどんどん飲み込まれていて…。
一刻一刻と今日の終わりが近付いてくる。
(ディーノは、私の誕生日なんか覚えてないんだ。)
私は、深い溜息をひとつ洩らした。
その時だった。
ディーノがデスクの引き出しから何かを取り出して、私を呼んだ。