短編

□構ってちゃんな彼
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「いい匂いすんのな」

「どうしたんです?」



彼が私に甘えてくるのは、珍しい事じゃない。
いつも職場で気を張っている分、家では緊張の糸が緩まるのか、普段では考えられないくらい構ってちゃんな一面があるのだ。
年上として頼れる所の方がもちろん多いが、私としては今日みたいに、少し弱っている彼も嫌いじゃない。



「俺、こんな所…部下に見られたら死ねる…」

「手塚さんとか?」

「言ってくれるな」




胡座をかいている彼に抱き着かれながら、私は立て膝で「今日はいつもより甘えたさんですね」と頭を撫でる。
ぎゅっと腕の力が強くなったのは多分恥ずかしいからだろう、顔を上げてくれる様子がない。



「今日も一日お疲れ様でした。どうしたら元気になってくれますか?」

「…もうちょっとこのまま」

「よしよし」



今日は彼の気がすむまで、甘やかしてあげる事にしよう。
そう思いながら、彼の頭を撫で続けた。





構ってちゃんな彼
(…キスしていい?)
(いつもは聞かないくせにー)

*

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