短編
□誓いのキスは雲の上で
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左手の薬指にはめられた指輪を撫でながら、今日もテレビを見る。
いつものようにHEROTVをつけて、コーヒーを一口。
「KOHスカイハイ!今日はどんな救出劇を見せてくれるのでしょうか!」
みんなのヒーロー、スカイハイ。
そのKOHが問題発言をしたのはもう一ヶ月も前のこと。
週刊誌や新聞が騒ぎに騒いで、一時期はKOHの結婚話で持ちきりだった。
あの日、帰ってきたら一言言ってやろうくらいに思っていたのだけど、突っ込む気もうせるくらいさわやかに帰ってきた彼が「嘘はついてないだろう?」なんて言うもんだからもう笑ってしまった。
…そして私は来週、念願の式を迎える。
「来週にウェディングを控えているスカイハイ、今日も絶好調です!お家でフィアンセもご覧になっているとか!ますます気合が入っているようですね!」
「…もう、アナウンサーも余計なこと言って…」
軽くテレビに突っ込みながら、キースが言っていたことを思い出す。
「結婚式は外がいいな。…広いところで、たくさん人を呼ぼう。
ヒーローの皆も、ジョンも一緒がいい。
教会で愛を誓って、皆に祝福されて、花びらの中を2人で歩こう。
ブーケトスはそうだな…ブルーローズ君にあげたらいい。
そして僕は、ウェディングドレス姿の君を抱いて空を飛ぼうじゃないか。
みんなの前じゃマスクは外せないから、雲の上まで2人で行こう。
そして誰もいない雲の上で、誓いのキスをしよう。…ロマンチックだとは思わないかい?」
ふふふと笑いながら、楽しみだなあ…なんてつぶやいて。
少しさめたコーヒーを飲み干して席を立つ。
後一時間もすれば帰ってくるであろう旦那様に暖かいご飯でも出してあげようと私は鼻歌交じりでキッチンへ向かうのだった。
誓いのキスは雲の上で
(スーツ出しとかねぇとなあー)
(お前らはいいよなあ、俺はヒーロースーツの上にフォーマルだ)
(あら、私もよ?)
(ぜーったいブーケとってみせるんだから!)
*