短編2
□プレイボーイの憂鬱
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最近、藤枝がおかしい。
帝都テレビで右に出るものはいないと自負するほど、プレイボーイなのを認めている彼から…この頃めっきり、女性関係の話を聞かない。
今までの取っ替え引っ替えはいったい何だったのか…。
「……あんたさ、具合でも悪いの」
「ぶっ…はあ?お前、何?」
食堂で向かい合わせにご飯をいただきながら、疑問をぶつけてみたけれど…思い切り変な顔をされた。
「最近、あんたの噂聞かないからさ。熱でもあんの?」
「お前、俺のことなんだと思ってんだよ」
いや、今までの経緯を知った上での話よ。とまた箸を動かす。
藤枝もなぜだか浮かない表情で、稲葉みたいに単純じゃないんだよと苦笑した。
「ちょっと、本当にどうしたの?」
「ま、あ…追いかけてみるのも悪くないかなって思っただけ。空井さんと仲良くやれよ」
「はあ?!」
ひらひらと手を振りながら食堂を後にした藤枝に、かける言葉も見つからないまま、私は味噌汁を飲み干した。
「まったく、稲葉にまで言われるとは…」
具合でも悪いの?なんて言われる位だから、以前の俺はもしかしたら病的に女性に見境がなかったのかも知れない。
来るもの拒まず去るもの追わず…そうやって取り繕ってきた関係は数知れず。自分なりにも楽しんできたつもりだった。
いつかは別れる、それが早いか遅いかの話…そう思っていた。
「俺と付き合わない?」
「はっ、離して下さい!破廉恥です!」
顔を真っ赤にして、涙を浮かべた彼女の事が忘れられないなんて……プレイボーイが聞いて呆れる。
今になってやっと、満たされなかった何かが分かるような気がしていた。
君じゃなきゃだめなんだ。
でも、俺は手に入れる術を知らない。
(何、あんた…手を引かれただけで破廉恥だ!なんて騒いだわけ)
(だっ、だって!初めてだったから、びっくりしたんだもん!)
(どうやったら今のこのご時世にあんたみたいな純粋な処女ができんのよ)
(ぎゃー!やめて!)
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