短編2

□今日は配達日です。
1ページ/2ページ


るり子さんの朝は早い。
とんとんとん、とリズミカルに大根を切っていると、炊飯器から電子音が聞こえた。
昨晩仕込んでおいた昆布だしを火にかけながら、炊飯器をあけてご飯を混ぜる。
みんなが起きてくる頃にはいい具合に蒸らされて、きっと美味しいと言ってくれるだろう。


今日の朝御飯は、鮭の塩焼きに大根のお味噌汁…だし巻き卵にほうれん草のおひたしを着けて…ああ、そうだお漬物とごま和えも一緒に。

全てが整ったころ、食堂はだんだんと賑やかになってくる。皆が食べている間にお弁当を詰めて…うん、今日もばっちり。

「るり子ちゃん、お茶くれるー?」

「ごちそうさまでした!いってきまーす!」


高校生組、社会人組を送り出して、黎明さんと深瀬さんにお茶とお饅頭を出すと、そういえば…と深瀬さんが呟いた。


「今日は配達日じゃねえか?」

「ああ、そうだねー。今日も美味しいお野菜が食べられるねー。」


俺はあいつに酒をたのんでんだよ、と深瀬さんは嬉しそうに煙草を吹かして、私を見た…正確には私の手を見てニヤリとした。
黎明さんは天狗殺し?あれきくんだよねー、美味しいし!と嬉々として手を叩く。はやくも酒盛りの予定がたったようだ。

私は食材リストを書き出しながら、厚焼き用のフライパンをコンロにおいた。
あの子は私のだし巻き卵が大好きだと言ってくれるから…お土産に作っておこう。
おつまみの仕込みもしておかなくちゃ、そう考えながら…私は卵を溶いた。



配達も承ります、何でも屋天狗商店


(るりるり嬉しそうだねー)
(あいつら仲良いからな)
(ん?クリもシロも嬉しいよねー、うんうん)
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ