Series用作品

□5.揺れる傘揺れる恋
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※蔵→謙 白石視点



今日の雨はいつもより気温が低いせいもあって夕方雪になるだろうと天気予報で言っていた。


ザー…。



「…寒っ!!」


傘をさして一緒に帰っている謙也が小さく叫ぶ。


「しゃーないやん。雨なんやから。」

「…やってそろそろ春になるっちゅーのになんで気温上がらんねんっ!!」


そういいながらこすっている両手は真っ赤で。


「手袋貸したろか?」

「ええわ。俺に貸したら白石が寒いやん。」



…もし俺達が恋人同士だったら、手でも繋げるのに。



謙也は俺の想いに気付いてるはずがないし、ただの「親友」としか思ってないだろう。
それが苦しくて、悲しい。


すると不意に謙也が言った。


「…じゃあ、片方だけ借りるわ。」

「残り半分はどうすんねん?」

「ええから!!」


訳も分からず片方の手袋を謙也に渡す。


謙也は左手に、俺は右手に手袋をはめるかっこうに。


「…?」
「こうすればええやん!」







ぎゅっ、と。


包帯を巻いていても分かる冷たい肌の感触。


「手ぇ繋ぐなんて子供みたいやけどな…誰も見てへんしええやろ。」



みるみる自分の体温が上がっていくのを感じた。


…これも「親友」だからこそできる芸当なんだと自分に言い聞かせる。




「どないしたん?白石。」

「…や、なんでもないで。」

それでも、微かに期待してしまう俺は、阿呆なんやろうか。


「なぁ、謙也…。」

「ん?」







揺れる傘揺れる恋
(思いきって、伝えてしまおうか)
 

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