Series用作品

□3.君を待つ雨の午後
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※蔵謙 謙也視点





外では雨が降り続いている。

風邪も割と強いので窓を開ける訳にもいかず、教室内は蒸し暑い感じがした。



「しらいしぃー…。早よせぇや…。」


俺は委員会がある白石と帰るため、教室で待っていた。


元々、待つのは得意ではない。
それでも俺が白石を待つのは、それだけ白石に想いを寄せているから。


無論、白石も俺には余分すぎるほどの愛情をくれる。
ま、そこがアイツのええところやけど。


「…なんか…飽きたわ…」


それでも根っからの性格は直らないらしく、俺は待つことに飽きてきた。

意味もなく机に突っ伏す。




「あ。」


不意に俺はいいことを考えた。
そのまま一つ前の白石の机に移動する。


「持ち物検査っちゅー話や!!」


一瞬勝手に他人の机を見ていいものかと思ったが、興味をもってしまったからには止められない。

彼氏の携帯電話のメール履歴を盗み見る女子の気持ちが少しだけ分かった気がした。




白石の机の中は、やはり綺麗だった。


(置き勉もしてへん…流石優等生や…。…ん?)



机の中に一冊ノートがある。


「『男子テニス部』…ってなんやコレ?」



中は部員一人一人のプロフィールやプレイスタイル、弱点からその克服方法まで、こと細かく書いてあった。



「…すご。」



思わず口について出た感嘆の言葉。


白石の「部長としての責任」っちゅーモンを感じた。



白石が帰ってきたら真っ先に労いの言葉をかけよう。

俺に出来ることならなんでもしてやりたい。



そう思った雨の日の午後。








君を待つ雨の午後
(待っているのも、悪くないかもな…)
 

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