小説

□道化
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押し込めた感情。

例えば、好きとか愛しいとか悲しいとか辛いとか…

そういうのが出てきそうになるのを必死で押さえて、私は貴方の前で笑う。

気を抜けば言ってしまいそうな鋭く痛む私の気持ちを飲み込んで、そうしてしまえば貴方はきっと気付かないから。


貴方の幸せを壊してしまうなんて、愚かな事はしたくないし、貴方に困った顔をさせたくもない。

テマリさんの横で笑うシカマルは、本当に幸せそうに見えて。

私さえ我慢すれば、誰も傷付きやしない。


「女ってどんなもん、貰ったら嬉しいんだ?」


恥ずかしげに首筋を書いて私に聞くシカマル。


「テマリさんに、プレゼント?」

「あぁ」


幼なじみなんて曖昧な位置で叶わない思いに燻る私。


「好きな人から貰うんなら、何でも嬉しいと思うよ?」

「その「何でも」ってのがめんどくせぇ」


必死に顔を筋肉を動かして笑う、滑稽な私。

ねぇ、知ってる?

言葉は、人を殺せるんだよ。


「全く…どんだけテマリさんが好きなのよ、あんたは」

「うるせぇ」


ほら、グサリグサリって。

シカマルは容赦ってものを知らないらしい。


「はいはい。んー…、お揃いの物とかは?喜ぶと思うよ」

「ああ、参考にしてみる」


ありがとうな。そう言って笑うシカマル。

もう、笑顔ですら凶器。

どういたしまして、と返事すると、またなとシカマルは歩いて行った。

もう、笑わなくて良いのに、緩く弧を描く口元は戻らなくて。

最低だな、と心で呟く。

笑顔から表情が戻らないまま、涙が目から落ちた。

悲しい、辛い、好き、嫌い、痛い、愛しい。

私はもう自分が笑ってるのか泣いているのかすらも分からなくなってしまった。






さて、な笑い話でもしようか!




壊してよ。

きっと全部嘘だから。

心も笑顔も涙も思いも。


***

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