KRR

□結局のところそういうこと。
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資料室からラボに戻ると、緑色のアホ毛が俺様専用椅子の背から見えていた。
そのまま少し観察してもいいかと思ったが余計なことをされても構わないので直ぐに声をかける。

「…おいおい隊長殿。また避難してきてたのかい?」

「あ、戻ってきたのでありますな。いやー、ギロロにいろいろばれちゃってねー。匿ってちょ」

「すでに寛ぐ気満々のくせしてよく言うぜ」

「あ、わかっちゃった?」

えへへへー、なんてわざとらしい笑い声を出しながらラボにぶら下げたハンモックに寝転んで持参した漫画を広げる。
そんな隊長殿を見て、まぁいいかなんて思えてる俺も大概甘いぜ。

「クルル曹長ー、ジュースー」

「ねーよんなもん」

「ちぇ、しけてんな」

漫画をすぐに閉じて、周りの機具をごちゃごちゃ弄りだそうとする隊長殿の腕を止める。
文句の一つでも言うかと思ったがニヤニヤと厭らしく唇を歪めたまま何も言いやしねぇ。
はめられたと気づいた瞬間、逆に俺の腕をしっかりと握られた。

「ねーえークルルくーん」

「気持ち悪い声出すなよ隊長。今はあんたに構ってる暇はねぇんだ」

「へぇー、じゃあ夜なら構ってくれるんだ?」

…勘弁してくれよ。

「おイタはあんたの勝手だが、俺様を巻き込むなよ。どーせ、今回もそのことで追いかけ回されてるんだろ」

俺だって、あの赤い悪魔を敵に回すつもりは毛頭ないんだぜ。
本命がいるくせに何を血迷ったことしてんだか。
そう言ってやろうとしたけど、別に今更何も変わらないなと思い直して腕を振り払うだけに留めた。
不満そうな声が聞こえたが全て無視してデスクに戻る。
ぶつぶつと文句を漏らしていたが、何の効果もないと悟ったのさすぐに口を閉じた。


研究を再開してから小一時間程経った頃、いつの間にか近寄ってきていた隊長が背中にのしかかってきた。
それも無視して作業を続けるとぼそぼそと独り言のように話し出した。

「…我輩、ギロロのことは好きでありますよ」

「だろうねぇ」

「ドロロのことも、好きでありますよ」

「勿論そうだろうな」

「タママも、冬樹殿も、クルルだって好きでありますよ」

「つまり浮気性ってやつか」

「クルル曹長も、堅物で困りますなぁ」

「クックック、あんたの恋人に比べちゃそうでもねぇよ」

「…ほんと、みんな堅物で嫌になっちゃうでありますよ」

ぐりぐりと白衣に顔をこすりつけている隊長殿の腰を引き寄せて自分の前に立たせる。
光の少ないラボの中だからか、いつもは明るい光を放っている目が暗く輝いて見えた。
そのまま何を言うでもなく向かい合っていると、ついに睫毛が震え出した。

「…やっぱり、我輩はダメな奴でありますなぁ」

「そう思うなら、いっそのこと手酷く全員フってやれよ」

「そんなのできるわけないでしょーが!」

「クックック、だろうなぁ」

だってみんな好きなんだもんとついに泣き出した隊長の背中を撫でてやる。
もうこれは病気みたいなもんで、治ると信じてるのはあの赤い奴ぐらいのもんだ。
今更直したって、何が変わるとも思えないが。

「たーいちょ、あんたは心配性過ぎるんだよ」

「うるさいうるさいうるさーい!どーせめんどくさいですよー悪かったね!」

「クックック、めんどくさいっつーよりはうざいけどな」

「んなっ!?」

もしフられたとしても、誰一人あんたから離れていく奴はいないだろうよ。
そんだけ愛されてるのにまだ足りないとか、とんでもない隊長に捕まっちまったもんだぜ。
今更どう頑張っても逃げ出せる気がしねぇ。
逃げ出せる隙があったとしても逃げ出す気はねぇけどな。

あんたが思ってるより、俺達はあんたに依存してるんだぜ。

なんて、言ってやらないけど。


「隊長、一つだけ覚えておけよ」

「?なんでありますか?」

「今の一番はあの赤達磨だろうけどな、もし一番が別の奴に移ったって、あんたを責める奴は誰一人いねぇよ」

ただ、恋敵が変わるだけだ。
あんたを奪おうとする対象が変わるだけで、大した差はねぇんだよ。

「俺達は、あんたに惚れてんだから」

憎みたくても憎めない、恨みたくても恨めない。
そんな最悪なあんたの隣に一秒でもいられるだけで、満足できる変態共しかいねぇんだよ。
だから、こうやって泣くのはやめろよ?


「隊長、愛してるぜ」


無論、俺様の腕の中以外では、な。



【結局のところそういうこと。 終】



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