KRR

□まぁ結局こいつが一番。
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あぎあぎあぎあぎ

「………おい」

ぎりぎりぎりぎり

「おいケロロ…」

「んぬぎぎぎぎぎぎ…」

「何を言っているのかわからんぞ」

「…なんでありますかぁー?記憶力のとぼしぃーいギロロ伍長ー?」

齧っていたクッションの隅を口から放して目線を合わせないまま厭味交じりに返事をすると、ぐぅと大分精神的に弱ったような音が聞こえてきた。
本当はもう大して怒ってないけど、楽しいからもう少しこのままでもいいかなって思う。

どうやって吾輩の機嫌を直そうか考えているギロロに、こっそり舌を突き出した。


事の始まりは三日前。



「ギーローローくぅーん」

あっそびまっしょー。
そう言って日向家庭にあるテントに入ると、ギロロはめんどくさそうに俺を見た。
武器磨きの手は止めないままに大きくため息を吐き出す。
この野郎…武器磨きの方が吾輩とのおしゃべりタイムより楽しいでありますか…。

「むきーっ!十二時間ぶりに会ったというのにその反応!恋人に対する態度にしては冷たすぎるとは思わないのかね!?」

「思わんな」

「げろーっ!?」

お前なんかニョロロに食われちまえー!なんて叫んでみても、ギロロは呆れたようにこっちを見ただけですぐに視線を手元の銃に戻した。
成り行きでこんな関係になっちゃったけどー、もういっそのことドロロとかー、クルルとかに乗り換えちゃおっかなー。
タママはー、あともうちょっと大きくなってからが食べごろだよねー。
いや今のままでも十分おいしいと思うんだけどー。
おいしいと言えば冬樹殿もちょうど食べごろというか。
いやこれがなかなか落ちてくれないんだけどねー。

ゾクリ

「(うっ、寒気が!)」

くだらないことばっかり考えていたことがばれたのかギロロの視線が痛い。
嫉妬深くて困っちゃうなーもー。
訓練生時代に遊びまわってた頃、思い切り殴られて説教された記憶は未だ新しい。
いやぁ、初心っていいよね。

何て言ってる場合じゃないでしょうが。

余計なことばっかり考えすぎてギロロの目が臨界点突破しかけてるよー。
どうすりゃいいんだよー。
吾輩の【ラブラブ☆ドキドキ☆初めてのデート】計画がおじゃんになりかけてる気がするよー。

「…それで?何か話があったんじゃないのか?」

「え?い、いやー、ギロロ伍長も忙しそうだしー?また後ででいいでありますよ」

「……また何かくだらんことを考えてるんじゃないだろうな」

「なっ!くだらなくなどないであります!」

「どうだか」

やれやれとため息をつくけど、一応話は聞いてくれるらしく持っていた銃を置いて武器の山に向かっていたからだを吾輩に向けた。
うん、こういう素直なところは好きでありますよ。

「明日はペコポンの調査に行くであります!」

「調査?」

「ペコポンにはたくさんの娯楽があるであります!それを調査すればそこからペコポンを侵略することも不可能ではないのであります!」

「……」

「だからね!ね!遊園地とかー映画館とかーショッピングとかー!」

「…お前が行きたいだけじゃあるまいな?」

「ぎっくー!そそそそそそそそそそんなことはないでありますよ!?」

「やはりそうか…くだらんな」

「えーっ!いいじゃんいいじゃん!初めてのデート!略して初デート!ヤることだけヤって終わりとかただのセフレでしょー!?一回ぐらいラブラブ甘々で過ごしたっていいじゃんかー!何回誘ってもサバイバルで山行ってくるとか!くだらんつまらんめんどくさいの一言で足蹴にしてさー!もっと愛してくれてもいいんじゃないのー!?吾輩寂しくて死ーんーじゃーうー!」

また武器磨きを再開しようとするギロロの腕に飛びついて耳元で叫ぶ。
これでちょっとした涙でも浮かべればギロロなんていちころであります!

「…くっ…」

ほーらねー!

「ねー、いいでしょー?」

少しだけ顔を赤くしたギロロの腕にさらに強くしがみつく。
髪の色と同じぐらい真っ赤になった顔を見て、ちょっと楽しくなってきたから背中にぐりぐりとおでこを擦りつけて甘えてみる。
むふー、と満足しておでこを放そうとすると、ちょっと油臭いギロロの手が俺の後頭部を押さえつけた。

何を迷ってんのか、調至近距離で目線を泳がせている。
ヘタレってやんなっちゃうね。

「(そういうところも好きなんだけど)」

あー、もう初デートなんてどうでもよくなってきちゃったな。

中々踏み切れないギロロの下唇に噛みつくと、スイッチが入ったのか俺の背中に周っていた右腕に力が入った。

「(あ、やべ)」

完全に目の色が変わったギロロから少し距離を取ろうとした瞬間に唇に噛みつかれた。
ぐずぐずと頭の芯が解かされていくようなキスに夢中になる。
何度か乱暴に噛みつかれて、首や肩に血が滲んでいるけどそんなことどうでもよかった。



「うっはー…ちょっとギロロ伍長ー。せめてキスマーク程度で終わらせてほしいでありますよ」

「………すまん」

「痛いなー。絶対今日これ風呂入ったら滲みるよ。デートしたら治るかもなー」

「くそっ…ハメたな…」

いろいろ済ませた後、あちこちが赤く染まってしまったパーカーを手洗いしながらテントを見ると、ギロロはでかいリュックに武器やらなんやらを詰め込み始めていた。

「またサバイバルでありますか?」

「ああ」

「いつ帰ってくるでありますか?」

「二日後だな」

「じゃあ三日後にデートするであります!」

「誰がそんな甘ったれたことなど…」

「……クルルって意外に甘やかしてくれるんだよねー」

「…」

「ドロロも言ったことなんでもしてくれるしー」

「…」

「あ、冬樹殿とショッピングしよっかなー」

「分かった!分かったから大人しくしていろ!」

「はーい」

投げやりに叫ばれた了承の返事に、左腕を限界まで上げて返事をしたその次の日の朝、まだ日も昇っていないうちから出かけようとするギロロを見送った。

で、帰ってきたのは三日目の今日だったという話なんですよ。

えぇ。
遅かれ早かれ吾輩の【ラブラブ☆ドキドキ☆初めてのデート】作戦は失敗に終わってしまったのであります。


「吾輩もさー。予想してなかったわけじゃないけどさー。さすがのさすがにこれは酷くない?」

「だからすまんと言っているだろう!」

「すまんで済んだら宇宙警察はいりませんー」

「くっ…」

何も言わなくなったギロロの顔にすかさずクッションを投げつけたけど、簡単に腕で防がれてしまった。
ちっ。


『ん?どうしたんだケロロ。こんな遅い時間に』

一日以上遅れて帰ってきたくせにけろっとしているギロロに、正直本当に泣きそうになってしまったのは絶対に言わないけど。
これぐらいの報復は許されるよね。

「…そういえばケロロ。タママに聞いたんだが…」

「え?」

「………半日ほど、クルルと基地に閉じこもって何をしていた…?」

「………あー!そういえば吾輩まだ家事手伝いの任務をこなしていなかったであります!じゃねーギロロ君」

「待て!挙動が不審過ぎるぞ!お前まさかまた…!」

「い、言いがかりはやめてもらおうか!別に寂しかったからクルルに慰めてもらってたとそんなんじゃ…!」

「やはりケロロ…お前また…」

「え、いやちょっと待とうよギロロくん話し合えばわか…

げろーっ!」


………地獄を見たであります。


少しだけ自重しようかなと思いながら痛む腰を擦って、満足そうに熟睡しているギロロの髪を思い切り引っ張ってみたりしたのでありました。



【まぁ結局こいつが一番。終】



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