【enigme‐エニグマ‐】

□寂しさなんて塗りつぶして。
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ベッドに身を伏せて放心している俺の隣で平然とお茶を飲んでいるタケマルさんを軽く睨む。
恥ずかしくて消えてしまいたい。
まだ身体中にはあの生々しい感覚が残っている。
気持ち悪くはなかった。
それなりに痛かったけど本音を言えばすごく気持ち良かった。
でもいきなりあれは酷いと思う。
驚いて固まる俺を好き勝手弄っておいて、何もなかったみたいに飄々と…。
こっちはハジメテの痛みに苦しんでるっていうのに…!

「あっ!そろそろみんな帰っ…痛っ!」

「動くと痛むぞ。」

「動かなくても充分痛いです!」

「そりゃあな。」

悪びれる様子のないタケマルさんのコートを羽織ったまま軽くその背中を叩いた。
振り向いたタケマルさんがまた唇を重ねてくる。
コートの隙間からするりと掌が忍び込んできて腹を撫でた。
身震いした俺に気をよくしたのか、ゆっくりと肌を辿る手から慌てて逃げた。
勢いでもう一回致してしまいそうなのでコートの前をしっかり合わせて小さく身体を丸める。
この人が力づくという実力行使に出れば俺の抵抗なんてあってもないようなものなんだろうけど、そこまで無理矢理にしたくはないのか簡単に手は引っ込んだ。

大体、Tシャツ一枚と短パンだけなんて軽装でいたのが間違いだったんだろう。
着やすいってことはイコール脱ぎやすいってことで、至極簡単に食われてしまった。
行為の最中に、自覚が足りないと怒られたような気もしたがその時は意識を失わないようにするだけで精一杯だった。
でも今決めた。
もうこの人の前であんな格好二度とするもんか。

「「「ただいまー。」」」

「うわっ、帰ってきちゃったし!」

「もう5時か。」

玄関の開く音がして女三人が帰ってきてしまった。
慌てて起き上がって部屋の鍵がかかっていることを確認する。
今は誰にも会いたくない。
とりあえず服を着ようとコートを床に落とすと、視線を感じて後ろを振り向いた。
じーっと俺を見ているタケマルさんがいて、慌ててコートを拾い上げた。

「みっ!見ないで下さいよ!」

「今更か。それにお前が脱いだんだろう。」

「うっ…。」

「着替えるなら早く着替えろ。……そのままでいるならそういう意味だと勘違いするぞ。」

「着替えます!」

痛みを堪えながら着替えて、もう一度ベッドに倒れ込むと、慣れない行為で溜まった疲れがどっと押し寄せてきた。

「眠いのか。」

「…だい、じょうぶ…。」

「寝とけ。」

強制的に閉じられる瞼をなんとか持ち上げているとまた頭を撫でられた。
それがまた眠りを誘い、頬に触れてきた掌を握る。
少し低い体温が心地好くて、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。

「ん…。」

次に目が覚めた時、タケマルさんはどこにもいなかったけれど、俺はもうきっと二度と寂しくない。


【寂しさなんて塗り潰して。 終】



【おまけ】

後日談

「スミオ〜!」

「む、どうしたのだモトっ!何故泣いているのだ!?」

「タケマルさんが…っ。」

「またあの人か…。今度はどうしたのだ?」

「タケマルさんがっ…家に来る度に姉貴達にさらわれて構ってくれないんだぁぁ!(泣)」

「…え?」

「姉貴達がタケマルさんのこと気に入っちゃって…毎日毎日タケマルさん呼んでこいって言われたり、家に呼んでもずっと姉貴達とゲームしててっ…!」

「……。」

「俺だって遊びたいのに…っ!」

「……やはり、家族は似るものなのか。」

「え?」

「いいや、なんでもない!タケマルさんへのラブはモトの方が多い!モトに必要なのは行動力のみだ!だから泣くな!」

「スミオっ…!」

「モトっ!」

「スミオぉぉお!(泣)」

スミオはモトを甘やかしていればいい。
兄と弟。


【おまけ2】

「うん?ついに支倉と一線を越えた?」

「もう大分前に済ませたと思ってたんだけど…。」

「お前らが早過ぎるだけだろ。」

「そうかい?」

「確か僕らは出会ってから一週間も経たないうちに全部済ませちゃいましたよね。」

「!?」

「祀木…冗談が過ぎるよ。」

「すみません。」

「………。」

「ほら、崇藤君がどこかに行っちゃったじゃないか。」

「意外に初ですよね。」

祀木&栗須夫婦にからかわれる崇藤タケマル。




【おまけ3】

「あ、タケマルだ。」

「今度こそ決着を。」

「あらあら、ゆっくりしていってね。」

「うぅぅ…。(泣)」

「何泣いてんの。暇ならジュース持ってきて。」

「お腹すいた。」

「冷蔵庫にケーキがあるわよー。」

「うぅ…みんなの馬鹿ぁぁあ!(泣)」

「え!?」

「……逃げちゃった。」

「まだまだ子供ねぇ…。」

「……。」

「あぁ、追い掛けるの?」

「多分なきべそかきながらそこら辺うろちょろしてるから、おやつの時間までに帰ってきてね。」

「あと…。」

「「「モトに酷いことしたらぶっ飛ば[すから!/します。/すわよ?]」」」

「……分かってる。」


どれだけ虐めてもみんなモトが大切。
モトが泣くのは仕方ない。
しかし酷いことだけはダメ絶対。


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