その他

□めだかボックス 宗像(+鶴喰)→善吉
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『ずっとめだかちゃんの傍にいてくれてありがとう』

『これからも、僕の大切な妹を守ってやっておくれよ』

いつだったか、そんな言葉を伝えられた気がする。
その時は、舞い上がる気持ちを抑えることでいっぱいいっぱいで、何もわかっちゃいなかった。

俺が、めだかちゃんを守れたことなんて一度もない。
俺はめだかちゃんについていくことに必死で、置いて行かれないように必死で走っていただけだった。
いや。
本当のところ、ついていけてさえいなかったんだろう。
最初から、同じ場所に立ってすらいなかったんだ。
それも当たり前だと今なら頷ける。
俺は普通(ノーマル)で、めだかちゃんは異常(アブノーマル)なんだ。
どれだけ一緒に居ようと、どれだけ努力しようと、俺(ノーマル)がめだかちゃん(アブノーマル)と対等になれるはずもない。

どうして俺は。

そんな考えが浮かんだ時、ゆったりとした微睡から身体が浮上していく感覚があった。

「……」

どうやら、俺は目的通り、余計なことを言う前に気絶できたいたようだ。
血を流し過ぎたから思考が覚束ない、なんていう言い訳ができないぐらいに、俺は気絶するまでのことをしっかりと覚えていた。

ぼんやりとした視界が次第にクリアになっていく。
辺りを見回してみて気づいたが、ここは保健室らしい。
どうして。誰が。
いくつか疑問が浮かんだ。
でも、それを言葉にする直前で見知らぬ誰かの声が思考に割り込んできた。

「おっと、目が覚めたかい人吉君。さすが赤さんの治療は的確だなあ」

「…は?って…誰だお前!?」

「鶴喰鴎」

「鶴喰…?」

独楽にひもを巻きつけながら答える鶴喰鴎とやらをじっくりと観察する。
何を考えているのかわからない顔で、どこか別の場所を見ている。
その方向には薬品が大量に入った棚や教員用の机があるのだが、多分そのどれかを見ているわけでもないんだろう。

もしかすると、こいつは敵なのかもしれない。
そう思ったが名前を名乗った後は一言もしゃべろうとしない鶴喰鴎は、悪いやつではない気がする。
勘とか第六感とかそういう便利で信じられるようなものじゃない気もするが。

一度話しかけてみるかと口を開きかけた瞬間、今度は保健室の扉を開く音で発そうとした言葉は遮られた。

「目が覚めたんだね善吉君」

「宗像先輩」

「調子はどうだい」

「驚くほどに体が軽いですよ」

「さすが、赤さんの治療は的確だね」

 
 

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