小説 デュラララ!!

□君が笑ってくれたから
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いつも通りのの放課後になる筈だった。


いつも通り臨也がちょっかいを掛けてきて俺がいつも通りそれを追いかける。
いつも通り学校を抜け出し、街中を走り回る。

いつも通りだった。
いつも通りの日常の筈だった。



でも、


俺の目の前で起きていることは何だ?



臨也がこちらの様子をみるため振り向いたときに近づいてきた1台のトラック。
それがいきなりふらふらし出したかと思えば車体が歩道へ走り臨也を覆い尽くす。

見開かれた目。伸ばされかけた腕。


だけどそれはほんの一瞬。


激突したトラックはそのまま横にある店のショーウィンドーに突っ込む。



横で何か叫んでいる女がいる。
病院へ電話するためかケータイで電話をかけるサラリーマンがいる。



皆いる。
動いている。

けれど、アイツはいない。動かない。


トラックの下から覗くアイツの足。
靴は脱げ、おかしな方向へ曲がっている。

気付くと俺は臨也の前にいた。

いつ動いたのか分からないが、いつの間にか臨也の身体をトラックの下から出し、臨也を抱え込んでいた。


まだほんのりと温もりがある臨也の顔にはいつもの笑みは無かった。
代わりという訳なのか、臨也は血みどろだった。

閉ざされた目、ひしゃげた頬。
血はなおもドクドクと流れ出ている。
いつもの臨也らしさのないその臨也をただただ抱きしめる。
痛いだろうからそっと、でも離れないようにギュッと。



不思議と周りの音が聞こえていないことに気付いた。
それどころか、辺りには何もなく、ただ俺と臨也がいるだけだった。


暫くして臨也の身体が急激に冷えていくのが分かった。
ガラスが刺さって血塗れの手もとも硬くなっていた。
そして何故か、臨也が軽くなっていくような気がした。
しっかり抱きしめていないとどこかへ行ってしまいそうに。
臨也が消えてしまいそうで思わず臨也、と呼び掛ける。

勿論、臨也の唇が動くことはない。
だけど―――



『シズちゃん』



聞こえてくる、アイツの声が。

俺は何もない白い空間に目をやる。
そしてその目を思いっきり見開いた。

「……臨也、?」

そこには、いつもの笑顔でこちらを見ている臨也がいた。


けれどそれは本当の臨也ではない。
本当の臨也は今、俺の腕の中にいるんだから。


『シズちゃんって本読むの好きだよね。どんな本読んでるの?わぁ、推理小説?あ、これは俺も読んだことあるよ―――』

『シズちゃん傘忘れたの?仕方ないなぁ、ほら俺の傘に入れてあげる』

『家何処だっけ?あ、そうなの?俺の家と結構近いよ!へぇ初めて知ったよ―――』

『……シズちゃん…いつもごめんね…でも、ね。………いつもいつも有難うね』

瞬間的に流れてきた昔の出来事。
何気無かった臨也との会話。
ずっと続くと思ってた。
だから別に今すぐ言わなくても良いって高を括って。

「臨也…俺、ずっと言えなかったことがあんだよ……俺さ…好きなんだ、手前がが。今まで恥ずかしくて言えなったけど、さ。」


そう言っても目の前にいる思い出の中の臨也も、俺の腕の中にいる臨也も何も言わない。
もう遅いのだ。間に合わなかった。



だって臨也は死んだから―――。



そう心中で呟く。
それと同時に俺の目からは大粒の涙が溢れた。

もう臨也との新しい思い出は作れない。
もう二度と、あの笑顔を見ることは出来ない。


一緒に本を読むことも、一緒に帰ることも、喧嘩することも、何もかも―――出来ないのだ。


「臨也っ…いざっ…やぁ…」


俺の口が勝手にアイツの名前を呼ぶ。
カラカラに乾いた口の中は引きつくが、そんなことなどに構わずに何度も呼ぶ。


「臨也……臨也…」


ポタポタと零れた涙は臨也の顔へ降りかかる。


「うっ…臨也ぁ……臨、…也」


嗚咽も交じって何を言っているのか分からなくなった頃―――


「シズちゃん…?」


またアイツの声が聞こえてくる。
だけど今度は―――俺の腕の中から。


ゆっくりと下を向くと、俺の腕の中で冷たくなっていた臨也が笑いかけていた。
血まみれだった顔はいつものようになめらかで、そこにある笑顔もいつもの臨也の笑みで。


「い…ざ、や……?」

「うん、シズちゃん。……ね、もう泣かないで?シズちゃんがあまりにも俺の名前呼ぶからさ。起きちゃったじゃない。…折角よく寝れてたのに」

そう言ってプクッと頬をふくらます。

「悪かった、な…。許してくれよ。」

切れ切れにそう言うと臨也は軽く微笑んだ。

「ダーメ。…泣くのやめて、笑ってくれるなら許してあげるよ。」


臨也の笑顔はとても優しく、俺が臨也を抱き締めているはずなのに、抱き締められているような気分になる。


「……臨也。」

「んー?まだなの?」

「好きだ。」


ポロリと零れたその言葉に臨也は軽く目を見開き次いで花が咲いたかのようにふわりと微笑む。



「……うん。俺も好き、大好き。」



そう言ってくれた臨也の顔を目に、脳に、身体中にやきつける。


これが、最後―――。




ありがとうな、臨也。




「じゃあな、臨也…おやすみ。」

顔に笑みを作る。
引きつってくしゃくしゃな笑顔にも関わらず臨也は合格、とにっこり微笑む。


「おやすみ、シズちゃん…またね。」


そう言って臨也は目を閉じた。






気付くと辺りは先程の空間から戻っていた。

想い出の臨也はどこにもいない。
勿論、下を向いても臨也の顔はひしゃげてぐちゃぐちゃで、さっきのように笑ってもいない。





でも。





俺は臨也に笑いかけながらその身体を優しく抱き締めた。




end.



―――――


これはですね…

ボーカロイドのカゲロウデイズを聴いていて何となーく 書いたやつですw
最初はシズちゃんが臨也を殺すはずだったのですがグダグダ書いているうちに ああいう事に……

実は初なんだ、死ねた。 どうなるか分からないまま書くのって楽しい(笑)
出来上がった時の敗北感は半端ないですが(笑)


ここまでお読みくださりありがとうございます。

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