企画・記念日用小説

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あれから数日が経ったが、二人は一言も話していない。
まず、静雄があれから学校を休んでいるせいで話すということが出来ないから仕方がないのだが────。
そして更に数日が経った今、静雄は学校に来た。


新羅は何か気付いているようだったが何も触れずに「おはよう」と笑顔で言ってくれた。
それに笑顔で挨拶をし、自分の席に座る。
まだ教室に来てないのかそれとも休みなのかわからないが、臨也は教室に居なかった。
そのことにホッとする。先程まで震えていた手はだいぶ落ち着き、自分の心の弱さに苦笑する。
早く学校が終わればいいのに──と考えていたら、教室のドアが勢い良く開き皆が注目する。その人物を見た瞬間、落ち着いていた手がまた震えはじめた。
臨也はこちらに凄い勢いで来ると静雄の腕を強く掴み、一言も言わずに教室から出る。
初めてみる臨也の冷たい目に静雄はただ黙ってついていった。




*****




ついた場所は静雄が前に臨也を押し倒し、大嫌いだと言った空き教室だった。
鍵などは元々掛けていないから直ぐに逃げれると考えていた静雄だったが、何処から手に入れたのか臨也はガチャリとドアに鍵を掛け逃げれないようにした。


「何で休んでたの?俺に会いたくないから?」


その声は凄く冷たくて、静雄は恐れを感じた。


「答えてよ」

臨也の言葉の通り俺は臨也に会いたくなくて学校を休んでいた。
押し倒して、あんな酷い事をしたうえに大嫌いだなんて泣きながら言った俺に臨也は嫌悪を抱くだろう。いや、拒否反応か。それを望んでやったというのに、きっと自分はそれを目の前でされるたら泣いてしまうから、だから休んでいた。
日も経ったし幽も心配しているから今日は来たのだが臨也の予想外の行動に静雄は来たことを後悔した。


「あ、逃げようだなんて馬鹿な事考えないでね」



冷たく笑う臨也に静雄はただ絶望を感じた。
そして思う


――俺が臨也をあんなに冷たく笑わせたのか…?
俺は臨也にあんなふうに笑ってほしくなんかない。あんな…あんな冷たいく辛そうな顔されるくらいなら俺は───



「……臨也っ、ごめん…俺」
「違う!」



臨也はまた、あの時みたいな苦しそうな顔でこちらを見ると違うんだと、もう一度言った



「こんな…こんな酷い事が言いたいんじゃない…、俺はシズちゃんに拒絶されるのが嫌なんだ。気付いてるんでしょ?俺の気持ちに。だから大嫌いだなんて言ったんでしょ?」


その後の臨也の表情は苦しそうなのに無理やり笑っていて見てはいられなかった。
俺は先程臨也が言った言葉を思い出す。
臨也の気持ち?何の事だかさっぱりわからない。
だって嫌いなんだろ?俺の事が……



「お前が俺を嫌いな事くらい知ってる」
「違う!ねぇ本当は知ってるんでしょ?だから俺の事を避けてた」

「知らねぇよ。じゃあお前は俺の事をどう思ってるんだよ?」



素直に思った事を口にすれば臨也は驚いたような焦ったような表情でこちらを数秒間見ていた。きっと俺の表情で直ぐに嘘か本当かわかったのだろう。人間観察が好きだからか、それとも嘘が苦手な俺だからか。


「言うから……、だから先に俺の質問に答えて」



何でだとかふざけんなと言おうと思ったが、臨也の声があまりにも真剣でそんな考えを止めてしまう。



「俺を避けてた理由を教えて」

「っ、…どうでもいいだろ…」

「ちゃんと答えて」

「……」

「シズちゃん」

「……、」

「シズちゃん」

「っ、……そ、れは…」



言葉を詰まらせ下を向く。好きだけどこの恋が叶わない事が分かりきっているからわざと嫌われ、諦められるようにしているだなんて言えるわけがない。



「言いたくねぇ」

「シズちゃんが言ってくれないなら俺も何も言わないし、この部屋から出してあげない」



今の臨也の声のトーンや表情でそれが本当だと気付く。言わなければいけないのか……これはもう強制的だ。



「…………………………俺、」

「うん」

「…………お前の、……事がすっ、…好きで、で、でも…お前は俺の事天敵としか見てないから、……だったらいっそこの前したこと…押し倒して嫌なことして嫌われた方が諦めもつくと思って………わりぃ、気持ちわりぃよな…今のは忘れてくれ」
「忘れない」

「な、んで……何でだよ!俺をこれ以上苦しませっ、」


言い終える前にギュッと強く臨也に抱き締められる。退けよと言っても、いっこうに離れる気配がない。



「シズちゃんさぁ…勝手に話を進めないでよ」

「……、」



大きな溜め息を吐く臨也にビクリ反応する。うざい奴とでも思われたか…何であれ、自分にとっては最悪な事だろう。
今すぐ逃げ出したいのに臨也の腕の力は思ったよりも強く、なかなか退かす事が出来ない。



「……は、なせよ」

「嫌だね逃がすもんか。やっと欲しいものが手に入るのに……」

「……俺をお前の駒にでもするつもりか?」



やっぱり臨也ならそうするか……
駒にはちょうど良いよな。だんだん胸の痛みが強くなってくる。こんな事なら耳を塞いどけば良かったな……。何てボーッと考えているとまた大きな溜め息を吐かれた。




「駒になんかするわけないじゃん!もう回りくどい事はしないからちゃんと聞いて!!シズちゃんはハッキリ言わないとわからないみたいだから」














「好きだよ愛してる」





優しく微笑みながら言う臨也に静雄は瞬きを繰り返す。
こ、……れは夢か…?



「シズちゃんてば鈍感すぎるから本当に困るよ。……だいたいさぁ、意地悪するのは止めてもっと優しくしようと思って近付いたら無視し始めるし」

「あ、あれは手前の新しい嫌がらせかと思ったから…、それに諦めるのにもちょうど良いって思って……」


「そしたら今度は俺を押し倒して耳舐めてきてさ、あげくには『大嫌いだ』なんて言って逃げちゃうし」

「あれやったらお前、俺に近付かなくなると思って………」

「じゃあ空き教室にいた理由は?」

「……、それ…は…」

「それは?」

「臨也が…、告白されてる所を見たくなくて……」

「嫉妬?」

「ち、ちげぇよ!!」

「可愛いなぁシズちゃんは!俺はシズちゃんしか好きじゃないから勿論振ったよ」

「…そうか……」

「何このすれ違い」

「全くだな…」


顔を見合せ二人でクスクスと笑う。
何を今まで馬鹿みたいな事をしてきたんだか。
暫く笑っていたらいつの間にか臨也の顔が目の前にあり、気が付いたら唇に温かいものが触れている事に気が付く。


「んっ…」


それは一瞬にして離れたが、感触はいまだに残っていて顔に熱が集まるのがわかる。


「愛してるよシズちゃん」

夢見たいな出来事だ。こんな夢にまでみた出来事が目の前で繰り広げられているなんて


「俺も、あ…ぃしてる……」

「っ!、シズちゃんそれは反則!!」



更に力を強くして抱き締めてくる臨也に笑いながら、自分の力も強くする。
だが、臨也が何か思い出したかのような反応をすると、口端を上げていることに気が付いた。
何か嫌な予感がする──!

「俺さぁ、シズちゃんに押し倒された時は誘ってんの?とか考えちゃって抵抗するのが遅れちゃったんだけど、シズちゃん俺の耳をさんざん舐めまわしてきたよね?俺は『攻める側』って事をきちんと理解してほしいんだ」

「あ、ああ…」


嫌な汗が出てきた……。
何かヤバいぞ…つか俺が受けみたいな事を言ってねぇか…?



「だからさぁ『受け』のはずのシズちゃんが俺を攻めたお仕置きをしなきゃね」

「!!?」



理不尽だろ──!?

そのまま押し倒され、学校が終わり外が暗くなるまでさんざんお仕置きをされた俺は、もう一生臨也を攻めるような馬鹿な事は止めようと強く決意したのだった。



無駄な抵抗はやめようか


(シズちゃんは俺の下で喘いでれば良いんだよ!)
((俺…こいつの何処が好きなんだろう……。))
(あ、ちょっとなら攻めても良いよ)
(え!)
(だってそしたらいっぱいシズちゃんにお仕置き出来るし)
(……。(何か頭痛がしてきた))






────────
親愛なる昴との誕生日企画に!!
『シズちゃんが無意識に嫉妬やいて臨也を軽く襲っちゃってすれ違ったりしたけど最後はハッピーエンド』
リクエストにちゃんと応えられたか不安ですが、これが今の私の精一杯です!

面倒だけど、誤字・脱字があったら教えて下さい(´;ω;`)
思ったリクエストと違うなぁとか思ったら、何時でも書き直すので!

こんな私ですがこれからも宜しくお願いします。



腐=青春! 青より



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