企画・記念日用小説

□君からもらう幸せ。
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ミンミンミンミン―――
セミが五月蠅いこの季節殆どの学生は夏季の大会に向けて部活に励み体を動かしている。
そんな中、ここ来神高校でも学生が一人―――補習を受けていた。

「…あ・つ・い!!!っだぁ〜…だるっ…!」

この暑い中、教室で―――平和島静雄はイライラしながら先生から受け取ったプリントの解答欄を埋めていた。

平和島静雄は成績こそ悪くはないが毎日のように授業をサボっているため、とうとう
この夏に補習生として学校へ来ることになったのだ。
サボるといっても臨也を追いかけていたら授業へ出るのを忘れてしまっていてだったり
八割方…というかほぼ臨也のせいだったりする。

「つーか…何で俺だけなんだよっ…アイツだって授業に出てねぇだろ…!?」

もっともな事を考えながらも、きちんと問題を解いていく。
因みに臨也は成績優秀につき、補習は免除になっている。

そんな理不尽なことなど到底知らぬ静雄は嫌々ながらも自分に非がある事を知っているがため、プリントを仕上げていった。


・。・。・。・。・。・

補習が終わったのは昼を少し過ぎたところだった。
昼食は先ほどプリントを回収しに来た先生から貰ったパンで済ませた。
なぜパンを貰えたのかは分からなかったがその時の先生の目が静雄を同情するようなそれだったため、こいつもあの臨也に苦汁を飲まされてきたんだろうなぁと大まかに勝手な解釈をした。

―――さて、さっさと帰るか。

ガラッ

静雄が教室のドアを開けるとブワッと熱風が入ってきた。

「うわっ…あっつぅ…!!」

教室の中は申し訳程度に扇風機が置いてあったため比較的、涼しかったらしいが―自分にとっては全くの灼熱地獄だった―廊下に扇風機などある訳ない。
ムワッと篭った熱気に包まれた廊下を歩いていると数秒しないうちに汗が出てきた。

―――マジかよ。

静雄は心中で悪態を吐いた。
建物の中でこれなら外はどれだけ暑いのか…考えただけでも汗がつたう。

―――やべぇ、どっか涼しい所さがさねぇと…!

この暑さも日が暮れれば幾分収まるだろう。
そう考えた静雄はこの学校にある涼しい場所を考えた。

保健室――いや、無理だな。
給食室の冷蔵庫――いや、もっと無理だな。つか、はいれねぇだろ。

―――あれ?この学校って涼しいところないんじゃ…?

最終手段の職員室という手段まで考えがいき、ふと静雄は窓の外を眺めた。
窓の外では、グラウンドで走り回っている陸上部、ノックをしている野球部がいた。

「…こんな暑い日によく走り回ったり運動できるよなぁ…」

―――っていっても勉強する気にもならねぇがな。…まぁ、俺は去年、図書室で勉強してたから快適だったがな。

と、そこまで考えて静雄の思考回路が停止した。

―――あれ…?今なんて考えた…俺…

どこで、勉強して快適だったって…?
サーッと血の気が引いていく。


「しかも、目の前じゃねぇじゃ!!!」


なぜ、今まで気付かなかったのだろうか…
もしや、この暑さで頭のどこかがショートしたのではないだろうか…?

「………」

何だか凄く馬鹿な気がする。
静雄は照れからきた顔の火照りを抑えながらそそくさと図書室へ入っていった。
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