小説 デュラララ!!

□僕たちの歩む道
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ふと窓の外で何かが落ちていった気がして俺はフッと顔をあげた。



「―――雨?」



今の時期では雨は久し振りで俺は思わずその光景を見入っていた。

気付いたらポツポツと降っていたのがザーザーと音が聞こえるぐらいに激しくなっている。



―――って、何見てるの俺…



普段の自分と違うようでいらつきながらも雨のせいかなとため息を突き窓から視線をずらそうとし

―――目の端の黄色の何かを捉えた。



「……シズ……ちゃん?」



窓の外、グラウンドの端っこで金髪の少年―――平和島静雄がしゃがみ込んでいた。
雨が降っているにも関わらず、動こうとせずジッと座っている。


どうしてそんな所で雨にうたれているのだろうか?
そもそも、何でそんな所にいるのだろう?

ふと考え込み、一つの確信をたたき出す。



―――確か今日、シズちゃんの所に何人か送ったっけ?



いつも不良共をたきつけてシズちゃんの元へ送り込んでいた日が確か今日だったことを思い出す。
今は放課後、いつものシズちゃんならあれ程の人数など朝飯前。
怪我をして動けないだなんて事はあり得ない。

俺はますますその疑問に頭を捻った。




―――が、そんな疑問も直ぐに消えた。
頬に流れ落ちるシズちゃんの涙が見えたから。



「……え、泣いて、るの、?」



窓越しに見えるシズちゃんの顔はくしゃくしゃに歪められてボロボロと零れている涙でぐちゃぐちゃだった。
我慢して我慢してまだまだ我慢して
――――でももう限界で。
声を押し殺して泣いているのであろうその光景がとても痛々しかった。


今、シズちゃんが泣いているのはきっと―――否、確実に俺のせい。
俺が送りこんだ相手をなぎ倒し、傷つき、泣いている。



「俺が、シズちゃんを……泣かせてる。」



そう呟いてから次第に目が見開かれる。

うすうす分かっていたことだった。
もしかしたら、と思っても敢えて目を逸らしてきた。
それを認めてしまえば、今の関係が崩れてしまうようで怖くて。



自分がしていることがシズちゃんを苦しめていることを、そして
―――同じくらいに傷ついている自分がいることも。
折原臨也が平和島静雄を好きなことも。



気付くと自分の頬にも涙が流れている。
思わずそでで拭うが後から後から流れてきてもう止められなかった。

シズちゃんの泣き顔を見て、俺の中で必死に保っていた何かが外れた。

今、行かなきゃ絶対に後悔する。



「シズ、ちゃん!!」



そのまま俺は、生徒玄関に向かいながら走った。
途中すれ違う生徒が普段いつも余裕な顔でいる俺のその切羽詰まった顔に驚き、次々に道をあける。

即席で出来上がった道を一生懸命走る。


生徒玄関を過ぎ、校舎の角を曲がりグラウンドへ駆ける。
さっき居た所からは丸見えだったが外では死角だったらしい。
ここから見えるのはちょっと飛び出た黄色い頭だけ。

あの最後の角を曲がればシズちゃんがいる。
俺は少しの躊躇いもなくその角を曲がった。



「シズちゃん!!!」



大きな声で名を呼ぶとビクリと体を震わせこちらに振りかえる。
その顔はさっき見たときと同じでくしゃくしゃだった。


フラフラと近寄った俺を目に捉え、しばし呆然としていたシズちゃんはハッと顔を強張らせる。



「臨也、てめっ…こんな所に何のよ――――え?」



シズちゃんが吐いたその言葉は俺が抱き締めたことによって途中で途切れた。
驚いて俺の顔を見ようとするがシズちゃんの肩口に顔を埋めているので見られない。

俺はその体勢のまま口を開く。


「シズちゃん……ごめん。……ごめんね」


そう言い、回す腕に力を籠める。


「今更かもしれないけど、さ。……あの…分かってるかもしれないけど……え、と…。今までシズちゃんの所に人を送ってたのは、俺で、さ。」


最後の言葉でシズちゃんの肩がピクッと上がり、ハッと息を飲む音が聞こえたが、俺も俺で切羽詰まっているので気にしなかった。


「で…さ…。その…俺…今まで…さ。シズちゃんを傷付ける様なことを、さ…。こう…わざとっ…ていうか…うん、わざと、してたんだよね…で、さ……その理由が、さ……えっと…こう―――」


「何なんだよっ!?俺の事が嫌いなら嫌いってはっきり言えばいいだろっ!?」


俺の言葉はシズちゃんの叫びによって遮られた。


「……え?」


「さっきから何なんだよっ!?いつもの手前らしくズバズバ言えばいいだろっ!?なんでさっきから遠回しに言ってんだよ!
――さっさと、言えよ…俺が嫌いだからって…!」


そう早口にまくしられて暫し、困惑する。


「……え…と…。え?ちょっと待ってよ…。」


(え?どういうこと?なんでここまで言われなきゃいけないの?今から俺…告白するつもりだったよね!?)


「えーと…シズちゃん…それは誤解―――」

「何が誤解だっ!!また手前ははぐらかすってか!?さっさと言えっつってんだろ!?そしたら、俺だって諦めがつ


―――あ」



シズちゃんは自分で叫んだ言葉に驚き、次いで顔を真っ赤にした。
俺は俺で今さっき耳に届いた言葉を理解しようとして失敗していた。

今、なんて?



「……え?」



先に状況を理解したのはシズちゃんだったらしく、オドオドとしながらも再度、口を開く。


「とっ、兎に角、さっさと言えって言ってんだろ!?嫌いって―――」


「俺はシズちゃんが好きだよ!!」



気付いたらそう叫んでいた。
まるで頭の中で熱湯が渦巻いているみたいだ。
そんな自分に吃驚したが、やや――否、かなりやけっぱちになっているので、グッと力を入れる。


「……は?」


「だからっ…だからさっき遠回しだったんじゃないか!!いくら俺でもね、好きな人に告白するなんてすっごく緊張するし、恥ずかしいんだって!分かる!?」



大声でそう叫ぶ。
もう何でもいい。

シズちゃんに気持ち、伝えれれば告白の仕方なんて関係ないや。



「っなんだけど!シズちゃんはどうなの!?俺の事嫌いなの!?」



最後にニヤッといつもの嫌な笑みを張り付ければシズちゃんなんて簡単にキレる。



「好きに決まってンだろ、ノミ蟲!!」



ただ、口調はキレてはいるが、放った言葉やほんのりと紅くなっている頬と柔らかく微笑んでる口元と、伸ばされた手がいつもと違うことを指している。


そのまま、俺の身体はシズちゃんに包まれた。




「何だよ…俺ら…バカみてぇだな」

「そうだね…こんな所でこんな告白の仕方なんてバカらしいね」



顔を見合わせて思わず二人して笑う。



「よしっ、そろそろ中入ろう?雨でビシャビシャだよ―――って、雨止んでる」

水溜まりがあることで、さっきまで雨が降っていたことは確かなのに、いつ止んだのか全く分からなかった。



「いつ、止んだんだ?全然気づかなかったぞ?」



空を見上げるが、雲間から覗いてる太陽に目を細める。
通り雨だったのかな…
でも、まるで―――



「俺らのこと、表してるみてぇだな」



ハハッとシズちゃんが笑いながらそう言う。
思わずカァッと頬が熱くなるのが分かる。


―――おんなじ事、思ってたんだ…


シンクロに思わず赤面しつつも、ちょっと嬉しかったり、して。



「そうだね」




そう、笑い返しながら言ってシズちゃんの手を握る。


「じゃっ、行こっか」


「あぁ。行くか」






二人の道は、どこまでも続いてる。





fin.





―――――

これはー…あれだ。

ブログの方で書かせて貰った小説です。 無性に書きたくなって(笑)

臨也は、シズちゃんの事が本当に好きで、だけど不器用なんで勘違いされてー でも、最後は意地を見せるー…みたいな?

臨也がちょっとヒョロ男みたいな印象を持っちゃったのは管理人だけでしょうか?(笑)


ここまでお読みくださりありがとうございます。

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