優雅に読書

□序章
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始まりの時


『………っ!?……また…あの夢か…』

勢いよく起き上がり暫く呆然とうつむき額を手で押さえるが、俺はソファーから立ち上がり、汗でベットリと体に引っ付いたタンクトップを脱ぎすて洗面所に向かった。

鏡に移る自分は酷く衰焦した顔をしている。そんな自分の表情に対し眉間にしわを寄せると一気に冷水を顔面に浴びせる。

蛇口を締め、近くにあった洗い立てのタオルで顔を拭き、もう一度鏡の自分を見る。

もう10年前の面影は殆ど無い。当時、小学6年生だったのだから、22歳の今、見た目が変わるのは不自然では無いだろう。そして、変わったのは見た目だけではない。あの日の出来事をきっかけに俺は今までの様な純粋な笑みを浮かべられなくなった。あの男の視線に心を凍てつかされた為だろうか…

顔は笑っていても、どこか冷めた意識が存在するのだ。
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