《Req&gift-1》

□こどもじかん。
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「ちわーっす、旦那方」

 米沢城に武田の忍がやってきた。ひどくバツの悪い顔をして、腕には着物に包まれた、犬猫にしては大きめの物体を抱えていた。

「…虎のオッサンの書状にしちゃあデカイな」

 政宗と小十郎は佐助が抱えた物体を疑いのまなざしで睨んでいた。…危険物じゃないだろうな。

「あははは。これが書状なわけありませんって。……でも、ちょっと預かってくれませんかね」

「Ha!?なんでうちなんだよ。オッサンの用事なら上杉に頼め」

「そのオッサンに頼めないからあんたらのとこに…うわっ、と!」

 物体が突然動いて、佐助の腕から地面に落ちた。もぞもぞと包まれた布から顔を出したのは、四つか五つ程に見える男童。

 双竜は顔を見合わせた。…なんだろうこの既視感は。見覚えがありすぎる気がするのだが、こんな小さな子供に近頃会った記憶がない。

「ちょっと坊ちゃん、暴れちゃダメでしょ」

 忍が男童の着物のほこりを掃いながら注意をすれば、

「佐助が着物をかけるから、くるしかったぞ!」

 童は顔を真っ赤にして反論した。

「……猿飛、てめえの子か?」

 まず小十郎が庭に下りて、男童に目線を合わせて屈んだ。一瞬びくついた表情になった童だが、すぐに背筋を伸ばしてぺこりと小さな頭を下げた。

「真田昌幸が次男、弁丸ともうします!いご、おみしりおきを!」

 小さいなりに礼儀をわかっていることには感心できた。だが、真田昌幸はもう彼岸の人だと聞いているし、彼の次男は虎の若子の通り名を持つ少年であるはず。

「…というコトで、俺様の子ではありません」

「それはわかったが……有り得ねぇだろ、このおチビさんが真田昌幸殿の次男なんて」

 落胤にしても無理があるだろう。問い詰めると、佐助は深く大きく溜め息をついた。

「実はねー…この子、真田の旦那なんだ。ちっちゃくなっちゃって」

 聞けば、数日前に珍しく風邪を引いた幸村に調合した薬を飲ませていたのだが、何かの折りに調合の割合を間違ってしまったのか、昨日の朝に見たら身体が縮んでいたらしい。

 …そんな嘘くさい話がどこに転がってるんだ。しかし見れば見るほど、男童は幸村によく似ていた。政宗も庭先に出て来て、大きな目をじーっと見つめる。

 負けじと見つめてくる童の目は、虎の若子と見つめ合うその時と同じく、独眼竜の胸を高く鳴らしてくれた。

「……チビのくせに上等だ。OK,うちで預かってやる」
 
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