☆Game☆
□つかまえたい、恋罪
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とある晴れた日の地方裁判所。
無罪判決を勝ち取った依頼人と笑顔で別れ、弁護士のオドロキこと王泥喜法介は思い切り背伸びをした。
「良かったですね、オドロキさん!」
みぬきも隣ではしゃいでいる。うっかり『ぼうしクン』を出しそうな勢いだ。
「うん。成歩堂さんも待ってるし、帰ろうか」
「はいっ!…あれ、牙琉さんがこっち来ますよ」
みぬきの視線の方に目をやると、先程まで法廷で闘っていた検事の牙琉響也が、優雅な足取りでこちらに歩いてくる。
オドロキの師匠、牙琉霧人の実弟だけあって、様々な部分が似ている。顔なんて、眼鏡をかけたら区別がつかない気もするが、ふたりの持つ雰囲気がまったく違うので、オドロキにはあまり問題はないのだが。
響也は兄のように、いかにも『切れ者』のオーラを出しているわけではなく、優しげだからだ。
「やあ。さっきはどうも、オデコくん、お嬢さん」
「はい…!」
唄うような甘い声音に、みぬきは既にやられてしまっている。
法廷においても、プライベートでも、この男の言葉の数々に毒気を抜かれてしまう人間はかなりいる。今日だって、裁判長がそうだった。
甘いマスクに気障ったらしいセリフがよく似合うのは、オドロキも認めるところだ。
「…で、何か用ですか?」
みぬきを後ろ手に庇いながら、オドロキは響也をにらんだ。すごんでみせたところでいろんな経験の差なのか、響也が動じるわけもないのだが。
「はは、かわいいなあ」
やはり動じない響也は、人差し指でオドロキの広いオデコの真ん中を軽くつついた。
…かわいいって…。いや、その前に二つしか歳が離れてないんだから、子供扱いするなっ!!
思い切り顔に出すオドロキに、響也は機嫌よく微笑むだけだった。
「ねえ、今日これから時間ある?」
「ありませんっ!!判決出てハイ終わり、の仕事じゃないのはお互い様でしょうが」
「まあ、確かにね。でも、少しくらいはいいじゃないか。デートしようよ」
ウィンクする姿も決まっていたが…。
…ああヤダ、もうこの検事と会いたくない…さっさと帰ろう…。
「…みぬきちゃん、牙琉さんがデートしたいって」
「デ、デートですかっ!!」
果たしてこの優男にみぬきを任せて大丈夫かとも考えたが、今だけは彼女に是非とも助けてもらいたいオドロキだった。自慢の大魔術で消してくれないだろうか。
当のみぬきは声を裏返して、ほっぺを朱くしている。
しかし、彼女のひとり大騒ぎも程なくして収まった。
「あっ!!みぬき、今日はこれからビビルバーでお仕事ですっ!!『ぼうしクン』も一緒に!」
「わーっ!!出さなくてい…ぶはっ!!」
みぬき自慢のカラクリ人形のパーツが見事にオドロキのアゴにヒットしてしまった。
「きゃあっ!!オドロキさん、大丈夫ですかッ?」
『ぼうしクン』をゆらゆらさせたまま、倒れたオドロキをのぞき込むみぬきのところへ、
「…ん?ボクシングでもしてたの?」
ニット帽にパーカーという、いささか裁判所には不似合いな男が近づいて来た。