☆Game☆
□…きみがほしい。
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雨続きの空に、ため息が零れる。
「…オドロキさん?」
成歩堂なんでも事務所の窓際、法介がぼーっと外を眺めていると、みぬきが声をかけてきた。
「…あ、おかえり」
学校の制服姿の彼女は、法介からじっと目を離さない。素直で強い輝きを持つその目線に、法介が折れて目を逸らした。
「…なんだよ。オレの顔、ヘン?」
「ううん。誰のこと、考えてるのかなって。もしかして、恋しちゃったとかですか!?」
…恋…っ!
その言葉に、鼓動が大きくはねた。さすが思春期の女の子、そういったことに鋭いものだ。
「えへへ、大当りですねー。で、オドロキさんは誰に恋しちゃったんですか?」
「お、オレは別に…恋なんて………」
気になる人はいるが、はっきり言ってわからない。
一方的に「好きだ」と言われて、抱きしめられたり、キスされたり。返事もまだしてないのに、どんどん踏み込んでくる。
そいつがオトコで、カッコよくて、しかも人気者の検事だから尚更始末が悪い。
あのくちびるにキスされるたび、あの腕に抱きしめられるたびに、何だか悪い病気に冒されて来ているような。
その病気なら治らなくていいかも、と思う自分もいる。いけない、とはわかっていても、もっと近づいて…。
「みぬき、当てちゃいますよ。ズヴァリ!茜さんですっ!」
「違うよ。茜さんはお姉ちゃんみたいなもんだろ」
「むう。じゃ、ラミロアさん」
「オレには手が届かないよ。ちなみに、みぬきちゃんも違うからね」
みぬきは次々に女性の名前をあげるが、どの女性も違った。しかし、何を思ったか、はっとして息を飲む。
「…も、もしかして、パパ?」
自分で言ったことなのに、みぬきは頬を両手でおさえて、きゃあ、と声をあげた。何だか嬉しそうに。
「オドロキさんがママでも、みぬき全然オッケーですから!」
知っている女性の名前が底をついてしまったので、成歩堂に走ったようだ。
「成歩堂さんも違うって!…あと、おやつだったらキッチンにつくってあるよ」
「やったあ!やっぱりオドロキさん、みぬきのママになれますよ!」
スカートをひらりとかえして、みぬきはキッチンへ消えた。
勢いで声に出しそうになってしまった。いや、あの人のことが気になるだけで、好きとか恋って次元じゃないし!
「…おかしいよ、オレ…」
同性相手に、本気であんなことするわけない。あの人は、アメリカにいたこともあるし、単なるスキンシップの延長線かもしれないわけだから。
なのに、どうして、キスされるたびに鼓動はやかましいくらい速くなって、あのまなざしから目を離せなくなってきて。
…ドキドキする。
誰にも言えるわけない、こんな気持ち。