☆Game☆
□雨にきこえる君の響き
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…胸をしめつけるのは、雨の音だけ?
成歩堂なんでも事務所から外に出て、見上げた空。
どんより重苦しい灰色。今にも泣き出しそう。
…ちょっと買い物行くだけだし、たいしたことないよな。
傘を取りに戻ろうかと考えたが、法介はそのまま歩き出した。
しかし、安心して歩いていたのもつかの間だった。
乾いたアスファルトに小さなしみが出来たかと思ったら、あっという間に色を変えていく。
どこか雨宿りできそうな場所を、と水溜まりをはねる靴も、だんだん重くなってきた。
「うー…」
靴下もシャツも、雨を思い切り吸い込んで気持ち悪い。前髪が落ちて、額や頬にはりついてくる。
駆け込んだ店でメモしたものと一緒に傘も買おうとしたら、みんな考えることは同じだったか。タッチの差で最後の一本をさらわれてしまった。…何だかついてないな。
外に出てみたものの、雨の勢いはちっとも弱まっていなかった。だからと言って、このままぼーっと待っているわけにもいかないし、少し待って事務所に戻ろう。
しかし、空はちっとも笑顔を見せる気配がない。
…財布と携帯をちゃんと持ってくれば良かった。ポケットに突っ込んだ釣銭だけじゃ、タクシーにも乗れない。そして、こんな時に限って、事務所のあるじは用事、そのムスメは学校だ。
…待ってても、どうにもならない、か。
雨粒が元気よく跳ねる道路にため息をつきながら、一歩踏み出そうとした瞬間。
空の涙に包まれた空間から隔離された。あたまの上には大きな傘。そして。
「…やっぱり君だった」
…一瞬、誰かわからなかったよ。
誰が見てもわかる端正な顔がほころんだ。