normal⇒@/A/D/I
along⇒G/B/C/H
delusive⇒E/F


















@








「ロックオンの夢ってなに?」
あなたと並んでおしゃべり。私の膝の上にはハロがコロコロ居座ってる。
「どうしたんだ?急に、」
何でもないよ。クリスティナとそんな話をしただけだから、気になったの。ロックオン の 夢。
「クリスティナの夢は綺麗なお嫁さん…だって」
そう言うとロックオンはアイツらしいなぁって笑って、そのあとうーんと考えはじめた。
「そうだなぁ…紛争根絶?」
「…そうゆう答えじゃない。」
『空気読メ!空気読メ!』
ハロに怒られたロックオンは苦笑いをしてた。
「だってさ、いきなり言われても思いつかねぇしさぁ…じゃあ、フェルトの夢は?やっぱしお嫁さん、か?」
いきなり振られてびっくりした。実はさっきクリスティナにも聞かれたけど、私も夢なんてわからないんだ。
「…うん?」
「何で疑問系なんだよ…でもま、フェルトなら可愛いお嫁さんになれるな。」
ロックオンは当たり前のように私の頭を撫でてくる。私の好きな行為。でも…
「本当に、なれる?」
「なれるなれる!」
『フェルト可愛イ可愛イ!』
ロックオンの顔を見上げるととても優しい顔だった。私の大好きな笑顔。でも…
「そうしたらさ、俺がフェルトの父さんやってやるよ。フェルトが嫁ぐんなら俺号泣しちゃう。」
ほら、やっぱり…
『泣キムシ泣キムシ!』
「違うっつーの、感動の涙なの!……な、フェルト?」
とても優しいロックオンはいつも私にたくさんの言葉をくれます。
でも…
今、一番ほしい言葉はそれじゃないよ…
「どうした?フェルト…」
「何でも、ない…」



言えないの、
ねぇ、
気付いてほしかった

(これは紛れもない愛なんだって、)

















A








ママが昔言っていた。

『パパとフェルトと、三人でいる時が一番幸せ』

幼い私は、もっと楽しい事があるのに…ってわからなかったけど。
今ならわかるよ、ママの言った事。


「どうした?」
あなたの体温を体いっぱい感じて、あなたの優しさに抱きしめられて、
私の背丈に合わせてくれたあなたの声が耳元で囁かれる。
「何でもないよ。」
あなたといるだけで幸せ。あなたといる事が幸せ。
「なぁフェルト、何か欲しいものあるか?」
顔は見えないけれど笑ってるってわかるよ。
「…何で?」
「特に意味はないけどな。」
ふっと離れて見たあなたの顔は、照れてるのかな。少し子供っぽい気がして、なんだか可愛かった。
「俺がやれるものならやりたいんだ。」
あなたが隣にいてくれれば良いよ。隣で声を聞かせて。そっと頭を撫でて。優しく包み込んで。
「何にも、いらない。」

あなたがどうしてそんな事聞いたのか、わかっちゃった。あなたはわかってるんだよね、あなたは現実から逃げないひとだから。


ごめんね。本当はあるよ、欲しいもの。あなたからしかいらないもの。

でも、絶対貰えないもの。




保障を頂戴、
何処にも
消えたりしないって!

(そんなの出来やしないでしょ)

















D








夜中にふと目が覚めるときが時々ある。
それは喉が渇いたり怖い夢を見たり、理由は様々だけど。


意味もなく目が覚めた。
真っ暗闇で何も見えない。
何も聞こえない。
でも、怖くはないの。あなたが隣にいてくれるから。
「……え?」
隣にいたはずのあなたがいない?
あなたの温もりもない?
なんで?
どうして?
眠りにおちる前まではすぐ隣にいたのに。
すぐ近くであなたの体温を感じていたのに。
「どこ…?どこ…ロックオン…」

この暗闇の中私ひとり?

いや…いや…いや…いやだよ…いやなの…ひとりは、いや…

「いやっ、」
「フェルト?」

気が付いたら、あなたは扉のところに立っていて…
「ロックオン…」
あなたの優しい顔が目の前にあって。
「ロックオンっ…ロックオンロックオンロックオンロックオンっ!」
私も良くわからないまま、抱きついて、子供みたいにわんわん泣いて。
「どうした?」
私の頭に置かれたあなたの掌はとても優しくて。
「目が、覚めたら…いないの……」
ああ、今嬉しいんだって思った。
「ロックオン、が、いないの…」
「ごめんな。」
もう片方の腕に体全部抱きしめられる。
「怖い思いさせちまったな…」
「ロックオンっ…ロックオンっ…」
もっと、もっと、抱きしめて。あなたといないときでも寂しくないように。




見えない不安よりも、
聞こえない絶望よりも、

(何よりも恐いことを知ったの)

















I








「ロックオン。」
彼は私がグリーティングルームに来たとき、彼はひとりで宇宙を見ていた。
その背中はとても寂しそうで、今にも宇宙に吸い込まれてしまいそうで(そんな訳ないのにね)、気が付いたら、自然と彼の名前を呼んでいた。
私が呼んだのに対して、彼は驚いた顔をひとつせず(まるで始めから呼ばれる事を知っていたように)ゆっくりと体を向けて私の方を見た。
「フェルト、何か用か?」
そう問われて、何にも用事なんてない事を知った。何でもないとはぐらかしてみても彼の好奇心からは逃げられない。
「何でもないって事はないだろ?」
彼に笑って追いつめられれば逃げられない。正直に理由を話すと彼は声を出して笑った。
「そんな訳ないだろ?」
「だって、ロックオンにいなくなってほしくなかったの。」
そう言ったら、彼は今度は眉間にしわを寄せて困ったように笑った。




あなたが
そうして笑うから

(わたしは何処までも何処までも、ひとりきりだと思う)









知ってるよ。それが“オトナの顔”なんでしょう?



















H
#9(ロックオン)









初めて彼女の顔を見たとき、そのあどけなさに正直驚いた。そして俺以上に強い意志を持ったまっすぐな瞳に気が付いてさらに驚いた。
いつの間にか、目の前で死んだ妹に彼女を重ねていて、今度こそは守らなければと心に誓った。
ずっと、両親の事、エイミーの事を心のどこかに抱えていたからそれが正しいとだけ、思っていた。
しかし、それは間違いだった。
彼女の意志の強さは始め俺が感じた以上だった。
両親の意志を継いだ彼女は、甘えたがりな妹ではなかった。
妹とは違う、ひとりの人間。


そんな彼女に、俺は守るなんて言えなかった。



『生き残れよ。』





それで精一杯だった。






ぐるりぐるり、
逆流する渦の中

(離すまいと必死だった、失くすまいと藻掻いた、ああそれは)
















G
#23(ロックオン)









薄れゆく意識の中で、無意識に考える。


ああ、もうあの子には触れられないのか。

あの、
明るい髪にも
柔らかい頬にも
触れることが出来ない。

自分で選んだ結果だけど、少し後悔した。

また、あの子の可愛らしい大きな瞳は涙で溢れるのか。



……それは自惚れだな。





どうか、どうか。
彼女が笑って暮らせる世界になりますように。

俺の大切な、大切な





キスのひとつも
しなかったけれど

(ちゃんと愛していたんだよ、大切で大切で、泣きたかったんだよ)

















B
#24(ティエリア視点)








どうして、

どうして、彼が居なくならなければならなかったのか。


どうして、僕ではなかったのか。



どうして、どうして。





逃げているなんて分かっていた。
責任転嫁だという事もわかっていた。

それでも、
だとしても、
誰かのせいにせずには居られなかった。

すべて、すべて僕のせい。


僕に変化をもたらした彼に、僕は恩を徒で返した。
最悪だ。

これが、『人間』なのか。




『フェルト、ゴメン』
「ハロは…悪くないよ…」

ブリッジから声が聞こえた。

彼女もまた、彼によって変化を成した人間。


ロックオン・ストラトス。
あなたという人は、


僕は、


なんて愚かなんだ。










変化を受け入れる事が強さだと、誰かが言っていた。





信憑性のかけらも
有りはしない、
その数だけ
強くなれるなんて迷信は

(それが本当なら君も僕も、目が溶けるまで泣いていた)

















C
#25後(フェルト)






ハロー、ハロー。




手紙を書くのに時間が空いてしまいましたね。ごめんなさい。

そちらはどうですか。私はそちらがどんなところなのか全く想像がつきません。
一面のきれいなお花畑でしょうか?
それともふわふわな雲の上?
もしかしたら、ずっと私がいた宇宙のどこかなのかもしれません。
あなたはずっと、私を見守ってくれているのかもしれません。

あなたがいなくなってすぐにクリスティナとリヒテンダールもそちらにいってしまいました。
もう二人に会えましたか?あなたの大切な家族にも会えましたか?私のパパとママは元気ですか。

みんなに会えないのはとても寂しいです。
でも私はまだそちらにはいけません。
私はまだ生きてます。
あなたとの約束をまだ守れています。
みんなのおかげで生きています。


私はこれからも生き残ります。何年も何年も生き残ります。あなたと約束したから。
それが今の私の生きる力です。






それでもやっぱり、


  ひとりはつらいです。







ひとり、またひとり

(いつでも置いていかれるのはわたしで、)



















E(ライル=ロックオフ/black)








「知ってるよ…ニールの大切な彼女…」
ヤツは俺と瓜二つの顔を狂気に満ち足りた笑顔にしてそう言った。
「お前…」
「可愛いよね、あの子…」
まるで大好きな玩具を愛でるように呟く。
「フェルトは、どこにいる…?」
「………。」
「どこにいるっ!?」
俺が声を荒げるとヤツはやれやれという表情をした。
「ノーコメント。」
しかし、返ってきたのは遊んでいるかのように、楽しげな声。
「あの子は…無事なんだろうな…?」
「ノーコメント。」
「傷付けたりしてないだろうな?」
「ノーコメント。」
「……声、聞かせてくれよ…」
「ノーコメント。」
「お前っ!」
「まぁまぁ、落ち着けってニール…」
楽しんでる。俺で遊んでいるんだ。ヤツの口元は相変わらず歪んだままだった。
「ひとつだけ、教えてやるよ…」
「何?!」


あの子、ずっとお前の事呼んでたよ…




「じゃあ、頑張れよニール。」
ヤツはきびすを返して車に乗って去っていく。追わなきゃ、追わなければ彼女の元に行けないのに体が動かない。
何?
『呼んでた』?
何だよそれ。どうゆう事だよ?
それは、つまり…
声にならない言葉がヒュッと唇をかすめた。




答えが欲しい、
お願いだから

(そして俺に残酷な真実を叩きつけて、居なくなればいい)

















F(ライル=ロックオフ/white)








「フェルト?顔色悪いけどどうかしたのか?」
「……ライル」
今隣にいるのは、彼にそっくりな人。顔も、声も、うり二つで…。見分けられないんじゃないかってぐらい。
とても優しくて、居心地が良くて。

でも、彼じゃない。


「風邪かな?…でも熱はないし。」
私の額にそっと当てられた掌は、彼のものとは違っていた。
「ライ、ル…」

似てるけど彼じゃない。
ロックオン、じゃない。

わかっているのに、私はライルに彼を重ねてしまう。

ニール、好きだよ。
大好きだよ。


「お腹痛いとか?」
「ライル。」
私の顔を覗き込むライルの表情なんか、忘れられない彼そのもので。

違う、違うの。
この人はニールじゃない。


「…どう、して。私にかまうの…?」
わかっているのに辛いんだよ。わかっているから辛いのかな。
ほっておいてくれればいいのに。その方が楽、なのに。



「それは、フェルトが…」




フェルトが好きだからだよ。







違うの。
その言葉が欲しいのは、あなたじゃないのに。
あなたは優しい、から。

彼と同じくらいに。




好きなんかじゃ、ない

(そう言えたら、どんなにか救われたことだろう)


















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