bun

□Color of Stardust is SILVER
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ごめんね。


記憶の中のその人達は私を抱きしめながらいつもそう言っていた。

ごめんね。
すまない。


泣きながら。
私の頭を撫でながら。

それから、だんだんと背中が遠くなっていく。
私は、いやだとか、行かないでとか言わない。言えないの。
でも、もう会えないって知ってる。だって、これは何度も何度も見ている





不意に目が覚めた。まただと思う。自分でもしらないうちに目から涙がこぼれているのだ。
そして、無性に怖くなる。何が怖いのかわからない。一人でいる不安なのか、いつくるかわからない死の恐怖なのか。

「ハロ…」
こういう時にはそばに誰かいてほしい。だがこんな時間に起きているのは宿直ぐらいだろう。こんな自分勝手に他人をわざわざ起こすのは忍びないし宿直には宿直の勤めがある。恋しくなるのは昼夜関係ない球体AIだ。
フェルトは自室から抜け出した。




しかし、この母艦をくまなく探してもお目当ての球体AIは見つからない。
そういえば、ハロのメンテナンスをするとイアンが言っていたような気がする。
諦めて部屋に帰ろうとすると、談話室のソファーに人影があった。
「…ロックオン」
興味深く近づいてみるとそれはいつも球体AIと共に行動している彼がソファーで座りながら寝ていた。
フェルトが近づいても彼は起きる気配がない。
(やっぱり疲れてるんだ。)
よく寝顔を見ると、ずいぶん幼く感じた。自分と10歳も離れているとは、デュナメスに乗り戦場に常に身を置いているとは考えられない。
(安心してくれてるんだね。)
(行かないでなんて言えないよ。でも、無事に帰ってきてほしいの。)





私はここにいるよ。



帰ってきて。


おかあさん。
おとうさん。



止まっていたはずの涙がまた流れだす。

(…ああ、ダメだ。)


「…フェルト?」
顔を上げると先ほどまで眠っていた彼と目が合う。
「どうした?」
目を細くして彼は微笑む。
「何でも、ない。」
起こしてごめんと言ってその場を去ろうとするも、彼に腕を掴まれ叶わなくなった。そして、そのまま抱きしめられる。
「フェルト、泣くな。」
彼は頭を撫でながらゆっくりと言い聞かせるように言葉をつなぐ。夢の中のフェルトの両親のように。
「俺は、ちゃんとお前のところへ帰ってくるから。だから、泣くな。」
「…どう、して」
どうして彼は自分の欲しい時に欲しい言葉をくれるのだろうか。
「泣くな…」
頭を撫でていた大きな掌はいつの間にか背中にあり、まるで幼子を寝かしつけるようにとても優しく撫でてくれた。
「…ありがとう、ニール」
初めて彼の本当の名前を呼んでみると、彼はひどく驚いた顔をしたがすぐに優しい笑顔になった。
「俺がいる。フェルトはひとりじゃないさ。ゆっくりお休み。」
泣いていた少女はそれを聞くとゆっくりと眠りに落ちていった。





END
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