連想異譚・壱

□Trick or Treat?/以蔵Ver.悪戯のシカエシ
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  普段、滅多なコトでは驚かない以蔵。


     だから、いい・・よね?


 せっかくイタズラしてるんだもん。ちゃんと驚いてもらわなくっちゃ。

   両頬を包んだ手に、チョッピリ力を込める。




   塞いだ唇も、視界いっぱいに煌く紅の瞳も、今は私がヒトリジメ。


     だから、いい・・かな?


  ヨクバリな出来心が彼とのキョリをもっと縮めちゃえ、とポンと背中を押す。

   開いたままの繋がった先へ、ソロっと舌を入り込ませれば、すぐに触れた同じモノ。

    チョンチョンっと先端で小突いてみると、紅の瞳がさらに大きく瞬く。
    

    
        
  今まで何度か交わしたキスだって、いつも始めはされる側なんだもん。


     だから、いい・・でしょ?


    Trick or Treat?


   先に言った方が勝ちってコトにしちゃおうっと。




     彼は私のされるがまま。

  甘い温みをオミヤゲに、そうっと唇を離せば、もう一度、紅の瞳が揺らぐ。

   次の瞬間、残された両手から伝わる頬の熱がドンドン上がっていく。




   頬を開放しても、何も言わずに私を見下ろす彼。

    湯気を噴きそうなくらい真っ赤な顔で、狼狽の余韻が漂っている。

     あれ、よっぽどビックリさせちゃったかな?


       「以蔵?」


   呼んでみると、パタパタとまた瞬きして小さくああ、と声を洩らす。





       「お菓子持ってないのがイケナイんだよ」


     だから、いいんだもん。

   続けて言おうとして、ハタ、と気づく。

     まさか、見間違いかな?


       「・・・菓子か」


  ニョっと伸びた大きな手が、私の後頭部に回り込む。


      え・・えっ?


       「貰うぞ、菓子」


 クイっと引き寄せられ、お互いの頬が擦れ合った後に感じたのは柔く食まれる耳朶の温み。


       「っ・・そ、それお菓子じゃないってばっ・・」

       「・・・そうか?」


   ふいと戻ってきた紅い眼差しには、見たコトのある一筋の深い灯火。

    ハロウィンにお返しなんて無かったハズ。


       「あのね、ハロウィンっていうのは・・」


    こうなったら、ちゃんと説明しないと。

   って、思ったのに。


       「菓子が無いから悪戯したんだろう。なら・・」


    鼻と鼻がくっ付きそうなくらいの急接近。


       「とりーと、おあ、とりーと・・だったか?」


     へっ?!


       「以蔵、違っ・・」



   "俺が食べたい菓子はお前なんだがな"


     塞がれる寸前に、囁かれた。




    悪戯は、ホドホドに♪




   
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