銀土

□君に贈る言葉は呪縛か祝福か
1ページ/41ページ

――――愛してるよ


甘く暖かい筈のこの言葉が冷たく、恐れすら孕んで聴こえ始めたのはいつからだろう。

「土方……愛してる……愛してるよ土方」

甘い筈のその言葉を、土方に囁くのは万事屋主坂田銀時だ。

「万…事……屋」

しっかり抱きしめられた土方は、その腕から逃れようと僅かに腕の中で靤くも、しっかりと抱きしめられていて、徒労に終わる。

録に身動きすら、取れずにいる土方は何かに、縋るように手を伸ばす。

ぼんやりと天井を見上げながら、伸ばした手を見詰める。

伸ばしたその手は、虚しく宙を掴むだけだった。


――――どうして。

頭の片隅に、その言葉だけが浮かぶ。

自分を抱きしめているその腕は離す気配が無い。

抱きしめている銀時が、その腕が恐ろしくてぼんやり天井を、見上げたままだった土方の漆黒の瞳からは、雫がこぼれ落ちる。

どうして、と土方は応え無き問いを自身の中で、ただ繰り返す。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ