青い本棚

□そこに愛はあるのか
1ページ/2ページ


悪魔に対する私憤から、命令を無視して奥村燐を殺害しようとしたネイガウスは、暫くの謹慎を言い渡されていたものの、正十字学園理事長であるメフィストフェレス卿の呼び出しには、渋い顔をしながらでも応じていた。


今日も呼び出され、定刻通りに扉の前へ足を運べば、ドアは開かれ、自室から一歩も出ることなくメフィストの居る場所へと導かれる。

短く挨拶をして入ると、ソコには地の王・アマイモンの姿もあった。

壁に凭れ目を閉じて、二人の会話をBGMに、どうやってコイツ等悪魔を抹殺しようか思考を巡らせていたネイガウスは、緑色の弟が日本各地に旅立ったのも、声を掛けられたのも完全に無視していた。

「聞いてます?ネイガウス先生」

会話のつもりが独り言になりっていた為、クルリと回って眼帯の男に呼び掛ける。

「…!……先生はやめろ…もう教師ではない…」

かけた言葉には、少しの間と彼らしい指摘が返ってきて、あぁ…そうでしたねぇ…と肯定。

「では、ネイガウス……何故輸血も医工騎士の治療も拒むのです?」

あの日から、まだ数日しか経っていない。
こうやって起きているのも辛いはず…なのに彼は無理に涼しい顔を装っている。


手騎士は血の契約により悪魔を召喚するが、先日の暴走時には失血死寸前まで陥ったのだ。
にもかかわらず、輸血も治療も無くては、回復は遅い。


「必要ないからそうしているまでだ」

駒が使えず不満か?と薄く笑うその顔は実に嫌みたらしいく、メフィストの征服欲を煽る。

「そうですね〜…治療を拒む要因として、今までのアナタの出血多量瀕死事件で、幾つか心当たりが無いこともないですが…」

腕を組み、う〜むと短いの顎髭をイジりながら左右に歩く。
それを少しだけ片目で追い、白々しい態度に溜め息をついて再び瞼を閉じる。

「解っているなら構うな。貴様の手配したもの等、二度と信用せん」

苛立ちを顔全面に表し、早く用件を言えと冷たく放たれた言葉は、メフィストの動きを止めた。


「つれないですねぇ…まぁ、用件なんて、アナタの身体一つさえあれば、直ぐに終わってしまうんですけどね」

ピクリと眉を上げ、ゆっくりと開いた目線の先にはニッコリと笑っているピエロ。
顔の前には二本の指で小瓶を挟んでいる。

「…何だソレは…」


「トリプルC濃度の聖水を更に圧縮させたものです♪コレをアナタに飲んでいただきます♪」

それほど迄に強力な聖水を飲ませて何をするつもりなのかと、怪訝な表情を浮かべるネイガウス。
目の前のふざけた男ががこんなにウキウキした時、ろくな事を考えていないのは周知の事実。


「…断る…と云えば?」

険しい顔つきで慎重に真意を探ろうとするが、怪しげな笑みを浮かべた儘のピエロの考えている事など解る筈もなく…
素早く小瓶をむしり取り、蓋を開けて臭いを確かめる。

『…特に何かが混ざってはいない…か……無味無臭と言う可能性もあるが…』

警戒しながらも、面倒なので一気に口へと流し込む。
ゴクリと音を立てて飲み下した聖水は人間には水と変わりない為、喉が潤っただけだ。

「聖水では増血剤の代わりにはならん。これで用は終わりか?なら私は…っ!?」

「ま〜だですよ。お楽しみはこれからです」

早々に帰ろうとするネイガウスから小瓶を取り上げ、縁に残った雫をその唇へと塗りたくる。
「っ…何のつもりだ…!」と手を弾くと小瓶はフカフカの絨毯に包まれ、音もなく床に転がる。
行動の意味が分からず、反射的に口を拭おうとするが、その手を拘束され顎を固定されたかと思えば、軽い痛みが走る。

「っつ…!?…ん、ーっ!」

下唇を牙で噛まれ、反射的に歯を食い縛った。
浅いのにねっとりとした口付けが齎されて、眉間の皺が一層深くなる。

相当濃度の高い聖水に振れているにも関わらず、全く何の効果も見られないので、内心驚きを隠せないが、この場をどう切り抜けるかで頭は一杯だった。
こういった類の嫌がらせを倒れる度に受けてきたネイガウスは、無茶をして大量の腕やらナベリウスを召喚するもんだから、結局はいつも気絶してしまう。

今の状態は今までの比ではないので、中級に近いナベリウス一体の召喚で意識は離れるだろうと判断し、やり過ごす事にした。

しかし、ネイガウスが引っ掛かっているのは、今までの嫌がらせでは聖水など飲まされなかった。こんなにしつこくもなかったし、どこか様子がおかしい。

珍しく頭の中がグルグルしていると、ゆっくりと離れた唇にハッとする。

「おや…今日は抵抗しないのですね?ならばほら…口を開けて下さい?」

手袋を嵌めた侭の親指で薄く開かれた唇を割り、前歯を緩く押すと、ゆっくりと口を開けられる。


その様子をニンマリと眺めていたメフィストは、再び顔を寄せるが、次の瞬間「アウチ!」と声を上げ腕を引っ込めた。

「そう何度も許すと思うな!」入れ込まれた指を思い切り噛み、床へと転がり距離をとる。
片膝立ちをして腕を出すと、コンパスを振り上げた。

「おっと…これ以上暴れられても面倒ですから…」

そう言った次の瞬間には、ネイガウスの身体は柔らかい絨毯に横たわり、巨大なコンパスは右手を床へと縫い付けていた。

「こうしておきましょう♪」

「ぐっ!あ゛あ゛ぁっ!!」


血が噴き出す右手の方へ体を丸め低い呻きを上げるネイガウスは、もとより青白かった顔色がより一層悪くなる。

そんな相手見下げ、舌舐めずりをすると帽子をデスクへと投げ、ゆっくりと覆い被さるメフィスト。


「っきっさま!」

青い炎に焼かれた左目では睨みつける事も出来ず、逆上し裏拳で殴り付けるも、すんなり攻撃を躱したメフィストに、又も手の自由と口唇を奪われる。

今度は口内まで、入念に、ゆっくりと…まるで愛撫されているかの様に舌を絡め取られる。

「…っ…は…っふ…」

出血と酸素不足で朦朧とする意識を繋ぎ止めているのは右手の痛みだけ。
暴れていた身体も徐々に力が抜けていき、部屋に響くのは耳に直接響く水音と荒い息づかいのみとなった。

巧みな舌使いで翻弄している側のピエロは、器用に騎士團のコートの前を開き、ベルトに手を掛けスラックスの前を寛げると、焦点の合わなくなっている堪能した舌をやっと解放した。


「っはぁ!…げほっ、ゲホがはっ!」


銀糸を引く間もなく、急に酸素を吸い過ぎて咳込むネイガウスの下肢に纏っている布を全て剥ぎ取る。


「さてさて、先にコレを入れておきましょうかね」

ゼェゼェと全身を震わせて呼吸をするのに精一杯になっているので、声すら上げられずなすがままになっている。

「…な…にを…っ…」

「おや、此処まで来て何をするのか解らないほどウブだったのですか?」

少し硬くなり始めたとはいえ、まだ柔らかいネイガウスの自身を片手で弄びながら、黒いシャツのボタンを外していき、露わになった肌を撫で回す。

「…ゃ、めろ…!…悪魔と…っは…通じる、など…ぅあっ!」

「もう通じているというのに…今更どうという事はない。後は堕ちるだけですよ。アナタも、そして私も…」

眼帯をグイッと押し上げ、火傷痕の痛々しい左目に強く牙を立てれば呻きが漏れるのは当たり前で…その痕が“悪魔と通じた証”と知らしめるかの様に甘噛みしたり舐めたりする。

メフィストの言葉に惑わされまいと、血の巡りの悪い脳味噌で“違う、そうじゃない”と繰り返す。


「…私は…堕ちたりなど、しないっ…堕ちるならっ…は…一人で…堕ちろっ!」


ろくに力の入らない手でメフィストのスカーフを下へと引き、露わになった喉元を喰い千切ろうとかぶりつく。体を動かす度に痛む右手は既に麻痺しかけていた。


「っくく…本当にアナタという人は…私を退屈させませんねぇ…」

噛み付かれたにも関わらず、喉で笑うと、左手をネイガウスの後頭部に添え、自らの首へと押し付ける。


「そのまま噛んでいて下さい?少し辛いですよ」

行動の意図が分からず困惑の色を見せるネイガウスを余所に、片足を折り曲げ横へと開かせる。
すると、何処から出したのか先程の小瓶と同じ形をしたやや大きめの瓶を取り出し、まだ堅く閉じられたままの蕾へと宛行えば、喉元の息使いが一瞬引き吊ったのが伝わった。


「心配しなくても、先程の聖水をジェル状にしたものです。先に入れておかないと、アナタを殺してしまうのでね」

そう言って中身を、本来排泄口でしかない場所にたっぷりと塗り込めた後、ゆっくりと瓶底を掌で押し込んでいくと、大きく肩が揺れ、猿轡の役割となっているメフィストの首から口が離せず、くぐもった声が直接皮膚へと振動を伝える。


「…ふっ…ぐぅぅ…ふう゛ぅ!」

「…っつ…ははっ!これは流石に痛い」

思った以上の力み具合に、思わず声を上げるメフィスト。
縁の広がっている部分だけ入れば、先の方はすんなり入り、グリグリと入り口を押す様にして掻き回す。


「んっ、…っ…、…っぅぐ…」
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ