SHORT

□幼馴染みのキョリカン
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〈1〉

真「痛っっ!!」
少女から悲痛な声が漏れた。
三沢真帆。
バスケ部でもクラスでも生粋のムードメーカーである。
その彼女の周りに心配そうな顔で人が集まっていた。竹「あ、わ…悪い」
その中の1人。
竹中夏陽。
髪をツンツンさせた男子バスケ部のエースで、昴も認めた実力者だ。

その彼は、床に尻餅をついて右手首を押さえる真帆を見下す形で謝罪していた。

真「う…ナツヒー!!ぶつかって来るんじゃねーよ!」

時は体育の時間。
場所は体育館、バスケットリングの下。
簡潔に説明すると、体育の授業のバスケでリバウンドを取ろうとした真帆と竹中が空中で衝突したのだ。
結果、バランスを崩した真帆は変に床に手をついてしまい、手首を痛めたのだった。
智「真帆!大丈夫!?」
同じチームで試合をしていた智花が心配と驚きに満ちた表情で言う。
紗季、愛莉、ひなた、それから授業を担当していた美星も心配そうに見つめていた。
真「いてて…よ、よゆーだって」
紗「嘘。ちょっと赤く腫れてるじゃない」
美「そうだぞ真帆。ちょっと見せてみな」
美星は屈んで真帆の手首を手に取った。
紗「どうですか?」
普段ライバル視したり喧嘩したりすることもある紗季だが、人一倍真帆の心配をしているように見える。
美「うーん…こりゃ捻挫かもな」
パッと見ただけではわかりにくいが、考えられる怪我は捻挫だ。
美「真帆、保健室行って来な。羽多野先生に湿布もらって来なよ」
真「えー。試合中だしナツヒをギャフンと言わせなきゃいけないしー!」
紗「馬鹿言ってないで。先生、私保健室に連れて行きます」
駄々をこねる真帆を紗季が引っ張る。
真帆への心配を表に出さないのが紗季らしかった。

美「いや、待って紗季」

すると、美星は紗季を呼び止めた。
そして。

美「わかってるな?竹中」

意味深な言葉を竹中に投げかける。
竹「え…」
竹中はわかっていないような間抜けな声を出した。

美「だから、怪我させた張本人が連れて行かないでどうすんのってこと」

美星は教師だ。
子どもに責任の取らせ方を教えるのも教育の一貫である。
そんな訳で―――。
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