NOVEL

□09 Only thing to do
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〈1〉

朝のホームルームが始まる前の休み時間、葵は廊下を渡り昴の教室に向かっていた。
葵「(一応お礼言わないとね…心配してくれたみたいだし)」
熱は無事に下がり、普通に学校にも登校することができた。
やがてクラスの前にたどり着き、目立たないようにそっとドアを開ける。
葵「昴」
席に着かずガヤガヤしているクラスに紛れて昴の席に向かう。
しかし。
葵「…?」
机に伏せて寝ている昴が目に映る。
そこまではいいのだが、いつもなら寝ぼけながら挨拶の1つくらいしてくれるはずだった。
葵「昴?大丈夫?」
肩に手を置いて軽く揺すってみる。
やがて目を擦りながらゆっくり葵の顔を見る。
昴「葵…か」
どっと疲れた表情と目が合った。
葵「ちょっと、大丈夫?昨日寝てないの?」
あぁそっか、葵は智花の件に首を突っ込んでいないんだっけ、と頭の中で確認する。
心配そうに見つめる幼馴染みの純粋な優しさが温かかった。
昴「いや、色々あってさ。…心配しなくていいよ…」こんな昴を見るのは長い付き合いの中で初めてかもしれない。
葵「心配するに決まってるじゃない!何があったの?…私には言いにくい事?」昴「違う…。葵は気にしなくていいから。…気遣ってくれてありがとな」
智花の事件。
昴は自分への責任を感じずにはいられなかった。
だから、幼馴染みにまで迷惑はかけられない。
昴「時間だぞ。教室戻った方が良い」
それだけ言ってまたさっきのように眠ってしまう。
葵「昴――」

そこでチャイムが鳴り、2人を引き裂いた。

葵はモヤモヤを引きずりながら教室を出て行った。
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