NOVEL

□07 初秋の事件
1ページ/5ページ


〈1〉

昴「え?風邪?」
葵「うん…ゴホッゴホッ。今朝…熱計ったら39℃近くてさ…」
暑かった夏も過ぎ、秋の気配が街を包んでいた。
そんなある日の昼休みのことだった。
昴はいつも通りに葵と一成と屋上で昼食を食べようと思って迎えに行ったのだが、欠席だということがわかり電話してみたのだ。
葵「ごめんね…今日の同好会できなくて」
昴「気にすんなって。葵の身体の方が大事だろ」
葵「ふぇ…」
昴「ん?どうした?」
葵「いや…何でも、ない」電話越しの様子はもちろん昴まで伝わらなかったが、気にせず話をすすめる。
昴「何か買って行く物とかあるか?なんだったら寄って行くけど」
葵「う、ううん…大丈夫!今…その…会える状態じゃないし」
昴「え、そんなに具合悪いのか?」
葵「そう…じゃなくて」
昔なら気軽にお見舞いに来て欲しかったが、恥ずかしいというか、手入れしていない髪を見られたくないというか、昴はそういった葵の乙女心には一向に気付かない。
昴「わかった。とりあえずお大事にな。何かあったら連絡してくれ」
葵「うん…ありがとね」
昴「ああ。じゃあ―――って何だよ一成」
突然、隣にいた一成にケータイを奪われる。
「お前の彼氏が心配してるぞ」とか色々葵に言っていたが放っておいた。

昴「(コーチもないし、放課後どうするかな)」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ