NOVEL

□14 本当のキモチ
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〈1〉

智花がスランプを脱出してから数日が経った。
朝練から放課後練習まで、今まで通りの変わらない日常が続いていた。

しかし。

昴「智花、お疲れさま」
智「はい!ありがとうございました」
昴「ははっ、本当に元気になったな。朝食の前に先にシャワー浴びておいで」
智「はい、毎回私が先ですみません…」
昴「智花は大事なお客さんなんだから当たり前だろ。さ、早く風邪ひかないうちに」
昴と智花。
最近、妙に仲良くなってしまったというか、距離感が今までと明らかに違っていた。
仲が良いのはもともとだったが、どうもあの日以来、お互い変に意識してしまうところがあるようだった。昴はバスケットボールを定位置に戻して家の中に入った。
台所では七夕が相変わらず腕を奮っていた。
次に居間の入口前を通りかかると、テレビを見入っている美星と目が合う。
美「お疲れー昴」
昴「あぁ、さんきゅ」
昴は適当に返事をして2階に上がろうとした。
その時。
美「昴」
昴「?」
美星は階段を上りかけていた昴を呼び止める。
美「ちょっと来て。すぐ終わるから」
そう言われるや否や昴は美星の前に移動する。
昴「何だ?朝からテンションの下がる話は御免だぜ」トーンの低い声で喋りかける。
大抵の場合は良い話ではないのだ。

美「まぁ上がりも下がりもしないだろうけど。昴、最近智花とどうだ?」

昴「え?」
美星はそんな突拍子もない言葉を投げかけた。
昴「どうって?」
美「前と変わったところとか…何かない?」
いつもより美星の目が真剣だったこともあり、昴は少し考えた。
昴「別に…以前と変わらないと思うけど」
その返答は美星の求めていたものとは違った。
美「…うん、まぁいいや」昴は首を傾げて2階へ上って行った。
美星は難しい顔をしたままテレビを見る。
七「美星ちゃん?どうかしたの?」
七夕は完成した豪華な料理を食卓に運びながら尋ねる。
美「別に、ちょっと考え事してただけ。さーて、飯でも食うかー」
七「もう、隠し事するんだから…」
秋晴れの空の下、1日が始まろうとしていた。
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