長編

□4■第U夜■
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安全と言える所が最早あるとは思えないが、
漸くコムリンUを撒くことが出来た。

アホくさい暴走理由と作った人物に何度目かの殺意を覚えた時、
スッと出された手と笑顔。






「エクソシストなんですね、宜しくお願いします。」






珍しい毛色の白い少年は屈託のない笑顔を向けて、
アレンと名乗った。

こんな時にあれですけど、と笑いながら出してきた手をどうしたら良いのか迷っていると、
リーバー班長に握手しとけ、と促される。








人見知りだし、人付き合い面倒だし…と今まで握手をした人間なんて数えるほど。

自己紹介の仕方など持ち合わせていない。

ぎこちなくアレンと手を合わせ、
宜しく、とだけ返した。





「サキ・蘇芳はアレンと同じく寄生型のイノセンスを持つエクソシストなんだ」






アレンよりも2歳年上だぞ、
と代わりに自己紹介をしてくれたリーバー班長がアタシの肩に手を乗せる。









発動により包帯が焼き切れてしまったが、
ほぼ治りかけているアタシの傷を見て楽になりたいと思ったバチかな、と溜息をついた。




「お前達エクソシストやファインダーは命懸けで戦場にいるってのにさ…
悪いな、おかえり」





アレンとアタシを交互に見て苦笑いを浮かべる。
おかえり、なんて此処に来てから何回も聞いているはずなのにまだむず痒い。

ただいま、と素っ気なく呟きリーバー班長から顔を背けると、
ボーっとしているアレンが目に入った。







「アレン?傷が痛むのか?」






報告は受けてるぞ、と心配そうに見るリーバー班長に大丈夫だと軽く返し、
ただいま、と苦笑いを浮かべた。















その時中央の吹き抜けからエレベーターが上がってくるのが見え、
化学班と共に先程何処かへ逃走したジョニーがクマのぬいぐるみを指し出してつかまれと呼んでいる。

届くかよ、とうんざりしながら心の中で突っ込んでいると、
その後ろからトラブルを起こした張本人が現れた。







リナリーはまだスリムか!?と暴れているコムイに、
忘れかけていた殺意が芽生え、エレベーターに飛び乗る。




『コムイィィィ!!!』



イノセンスを発動した手で殴ってやると振りかざした瞬間、
さっきまでいた位置にコムリンUが突き破ってきた。
まだその場にいた4人は瓦礫を避けて逃げ回るしかない。

再度眼の前に現れたコムリンUに完全に思考がキレてしまったジョニーは、
インテリをなめんなよぉー!と大砲−エレベーターにこんなものが仕込まれていたのか−を向けている。






「ボクのコムリンを撃つなぁ!!!」






わが子の身の危険を察知し
、大砲の操縦をしているジョニーの顔に抱きつく。

そのせいで大砲が誤作動を起こし、
エレベーターが高速に回転しながら教団中を弾が無くなるまで撃ち壊した。




化学班員達が押さえろと、
コムイを拘束し出し、簀巻き状態で暴れ転がるコムイ。
大砲誤作動のせいで更に瓦礫まみれになり、
殺す気か!!とキレるリーバー班長の声が聞こえる。





こいつのこういうふざけた所が嫌いなんだ、と苛立つ。
回転による眩暈にふらつきながら殺意に身を任せ、
コムイの顔に炎の蹴りを振りおろした。


寸での所で避けたのか、顔の真横に脚が降り、
コムイの髪が更にチリチリに焼け焦げるが気にしない。





血の気が引くように大人しくなる彼に、
止めろと睨みつけ、砲台の先端にやる。

簀巻き状態で泣きながらコムリンUを見る彼を一瞥し、
これで騒動も終わるだろうと砲台から離れた時だった。



「アレンくんの対アクマ武器が損傷してるんだって」




直してあげなさい、というコムイの言葉に反応し、
コムリンUがアレンに照準を絞った。
最優先ニ処置スベシと言う声と共にコードの腕でアレンの足首を捉え、
手術室と書かれた扉を開けアレンを内部に引きずり込む。



手術、手術とコムイに酷似したメカが数体、扉内部に現れ、
手にはドリルやチェーンソーと言ったまず人体の治療には使用しない道具を持っていた。



生命の危険を感じ、
悪寒が走ったアレンはイノセンスを発動。
先日のイタリアの任務地で使えるようになった新形態の破壊光線を出そうとした。




その瞬間、首に何かが刺さった気がして、力が抜ける。


勿論発動していた左手も戻り、
全身に回る痺れと共に意識も朦朧としてきた。
リーバー班長にリナリーを、と告げたと同時にコムイ型のメカにがっしりと掴まれ、
内部に収容される。











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