長編

□3■第T夜■
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「何かあったさ?」


教団の地下水路からここスイスに到着するまで、
いつもより大人しい事に気付いたのか彼特有の訛りで聞いてきた。





赤い髪の毛にバンダナを付け、隻眼の彼が今回の任務の同行者。
このブックマンJr.は年が近いエクソシストの中で、
任務のコンビを組む回数が多い。
彼とブックマンと3人で書庫に入り浸ることも多く、
数少ない何でも話せる人間の1人である。





彼の袖を掴みながら背の高いラビに目をやると、
優しく頭を撫でてくれた。

アタシを甘やかすラビが好きだ。
と言うよりアタシを甘やかすのが彼は上手いのだ。






徒歩で渓谷へ向かいながら、
食堂での一件を話していると白い少年の事を思い出した。



『ユウと喧嘩する珍しい毛色を見たよー』



ユウと喧嘩できる人間なんて他に居たのか、
とこちらを見ながらまた優しく髪を撫でてくれた。

ユウとは既にイノセンス使用レベルの喧嘩を数回繰り広げ、
化学班や総合管理班、医療班まで悩ませたことがある。
気が合わない、と言うわけではない。
本気で向き合えるので自分的には心を開いていると思う。
現にユウも「何でも話せる数少ない人間」の一人なのだ。


お互い歯に衣を着せない配慮なんて言葉は皆無の二人だから、
エスカレートして喧嘩に発展してしまうのだけど。
そして決まってユウを止めるのがリナリーで、
アタシを止めるのがラビなのだ。







1歳しか違わないのにラビにはホントに頭が上がらない。
スグに顔に出て態度に出てしまうアタシのストッパー兼安定剤だと思う。
色々考えていると少し照れ臭くなってラビの袖から手を離し、
先に来ているはずのファインダーを探す。





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