長編

□10,5■第]夜■
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「千年コー、何見てんのぉ?」





少し落とされた照明の部屋の真ん中で、
大きなロッキングチェアに身を委ねながら、
手元を眺める男が一人。

大きな風体にシルクハットを被り、
千年コーと呼ばれる彼は
世界を暗黒に変えようとしている首謀者だ。









手には小さな箱。

飾りっ毛の無い、真っ白な箱。
片手に収まってしまう程のソレは、
少し(かなり?) 肥満体型の巨漢が持っているせいで小ささを誇張していた。







「箱ですヨ。」

「空っぽじゃん!」

「空であって空ではないのでス。」



その言葉が理解出来ず、
男性と手元をキョロキョロと見た。

何度見ても空っぽだ。
何も入っていない証拠に底が見えている。









「不可侵の零、でス。」

「ゼロ?」



少し寂しそうに見つめるソレ。
シンプルな割に存在を主張するかの様に、
彼の手の中で鎮座している。




「我輩も干渉出来ない唯一の世界でス」

「僕も?」

「誰にも、でス」



忌々しくて愛おしい。
そんな相反する感情を起こさせるソレ。


いつか、その零を。










そんな声がした気がした。




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