長編
□10■第\夜■
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此処は何処だ。
■第\話■
「嵐が咲いた」
握りしめたのは、ブーゲンビリアの華。
左右に建ち並ぶ、白い煉瓦の壁。
彼方へと続く、煉瓦の道。
褐色の扉が点々と見える。
空は…薄い青灰色。
ピントが合わず、はっきりとしない視界。
漸く自分が寝そべって居ることに気付いた。
身体を起こせば眩暈に襲われ、
貧血から来ているのか、力が入らない。
海上の戦いで受けた傷は既に血が止まっているものの、
全身を覆う切り傷が痛む。
片手で頭を押さえながら辺りを見渡す。
声も物音も一切聞こえない。
無音の空間。
身動きすれば僅かに響く衣擦れと砂利の音。
視界は未だぼんやりと靄が掛かっていた。
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