長編

□10■第\夜■
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「懐かしいね」



数回しか来た事の無い空間。

生まれた場所でもないのに何故かそう思う。






「あぁ」

「こんな陰気臭ェとこ、趣味じゃねェんだけどよ」



隣を歩くは甘党と顔色の悪い双子。


辿り着いた空間は豪勢な額縁に飾られた肖像画が所狭しと壁を埋めつくし、
最奥の階段を数段上った先には十字架を割った様な箱の中
巨大な頭部と歯車とパイプオルガンが鎮座している。







「キミ達のオリジナルの生まれ故郷なのですかラ」




そう、此処は旧約聖書開巻第一の書。

創世記6章から8章に記されている“ノアの方舟”。



第2のアダムとされるノアが生き延びた術の神からの神聖な乗り物。


ソレが今やアクマの生成工場とはなんたる皮肉。

人間とアクマは同郷だったと言うオチ。





「ですが、この方舟とはもうじきお別れでス。
グッバイ江戸。来たるべき破滅的の運命の為に
新たな資格を持つ舟に乗り換えるのでス」



真っ暗な天井に千年公の声が響いた。




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